両親の教育からヒントを得た循環
廣澤:前編では、小林さんのキャリア観について伺いましたが、後編では小林さんが代表を務めるAGRIKOのビジネスについてお聞きします。まず、AGRIKOの社名の由来から伺えますか。
小林:AGRIKOという社名は、アグリカルチャー(農業)と子どもの子で「AGRIKO(アグリコ)」になっています。起業の際、「農業の業界全体を受け継ぐ子どもに、私たちがなります!」という気持ちを込めて、活動をスタートしました。
また、AGRIKOのロゴのOには、ぐんぐん育つ苗のような苗色を使用し、持続可能で循環する農業の輪の形を表現しています。
廣澤:親から子に引き継ぐ、循環させるというコンセプトから、現在展開されている事業に落とし込み具現化していることが素晴らしいと思います。大元のコンセプトのヒントとなる出来事が何かあったのでしょうか?
小林:元々両親が食農教育に力を入れていて、小学校の自由研究で川の水質検査をしたり、海水から塩を作ったりした経験があり……(笑)。
廣澤:小学生ながら研究者みたいなことをしていたのですね(笑)。
小林:大人になった今でもpH試験紙で水質検査してるのは、周りで私ぐらいだと思います。でも、この食農教育で得られた経験が循環を重要視する原体験になっています。この循環は生産物や人、お金、環境など全部が回らなければいけないので、ロゴにもその想いを乗せました。
ビル産ビル消で企業・障がい者・環境すべてに価値を
廣澤:続いて、AGRIKOが展開している事業の概要、ユニークな点について教えてください。
小林:現在AGRIKOでは、水耕栽培と水産養殖のシステムを合わせ持ち、環境にやさしい農業として世界でも注目されている「アクアポニックス栽培」を導入した循環型の屋上ファーム「AGRIKO FARM 桜新町」と「AGRIKO FARM 白金」を運営しています。そのファームを通して、企業の障がい者雇用支援やSDGsなどの社会課題解決のサポートを行っています。
ユニークなのは、3つの循環を大切にして持続可能な形を提案している点です。1つ目はアクアポニックスで魚の養殖で出た排水を水耕栽培に活用している水の循環です。ビルの屋上でも魚と野菜両方を育てることができます。
2つ目は、「ビル産ビル消」です。ビルの屋上で生産し、ビル内の飲食店で消費する循環が実現可能になります。
3つ目は収益の循環です。企業では43.5人に1人、障がい者雇用をしなければならない義務がありますが、活躍の場が少ないのが現状で、どうしたら良いかと相談をよく受けます。AGRIKO FARMを利用していただくことで、ビル産ビル消によって生産した野菜・魚で販売利益を得ることができ、その利益は障がい者の方にインセンティブバックされます。
また、ファームで子ども向けの夏休みの自由研究イベントを開催したり、生産物を使っておりオリジナル商品を作ったりもでき、障がい者雇用の義務を果たしながらSDGsへの取り組みも進められるメリットもあります。
このように、企業・障がい者・環境すべてがうまく循環する仕組み作りを心掛けています。