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顧客の知覚価値から考える 納得感のあるプライシングとは【お薦めの書籍】

 現在、原材料費の高騰などが要因で、多くの企業が値上げを強いられる状況になっています。しかし、価格を変えてしまうことに対して不安や抵抗があるが多くいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、100以上のサービスの値付け支援を行ってきたプライシングの専門家が、プライシングの基本的な考え方や実践方法を解説する本を紹介します。

利益向上のカギ「プライシング」

 今回紹介する書籍は『値決めの教科書 勘と経験に頼らないプライシングの新常識』。著者は、プライシングスタジオ株式会社で代表取締役CEOを務める高橋嘉尋氏です。

 高橋氏は同社を設立以来、30以上の業界100以上のサービスの値付けの支援を行っており 、2023年5月にForbes誌が発表した「FORBES 30 UNDER 30 ASIA LIST」ではENTERPRISE TECHNOLOGY部門に選出されています。

画像を説明するテキストなくても可
値決めの教科書 勘と経験に頼らないプライシングの新常識
高橋 嘉尋氏(著)、日経BP 1,980円(税込)

 本書では、数多くの業界に対して商品やサービスのプライシング支援を行ってきた高橋氏が、「プライシングに関わる・興味があるビジネスマンが最初に読む本」としてプライシングの実務における手法や考え方を解説しています。

 現在、原材料費の高騰などが要因で、あらゆる商品が値上げを強いられる状況が続いています。そもそもプライシングは「マーケティングの4P」に数えられるほど重要な要素とされていますが、顧客が納得できるような値付けをできるのか不安を感じたり、そもそもプライシングの基本的な手順や考え方を理解できていなかったりという方も少なくないのではないでしょうか。

 本書では、価格を「利益に直接影響を与える因数の一つ」(「価格」×「販売数」-「コスト」)と説明しています。

 日本の企業では、「販売数」を増やすための広告施策や「コスト」をカットするための施策など、「価格」以外の因数への投資は積極的にされています。ですが、価格の調整、プライシングに対しての投資は積極的にされていないと高橋氏は主張しています。

 本書ではこうした課題を前提に、実際にプライシングで効果を上げている具体例を使いながら、プライシングによるマネタイズの重要性や効果の高さ、そして顧客から納得を得られるプライシングの手法を説明しています。

重要なのは商品・サービスの価値を価格への転換

 本書でプライシングが重要と述べられるのにはどのような理由があるのでしょうか?

価格が1%改善すると、営業利益は23.2%も向上することが分かります。これは、販売数を1%増やした場合や、固定費や変動費といったコストを1%削減した際の利益改善効果を上回る数字です。伸びしろの大きさに加え、利益の改善効果から見ても、「価格」すなわちプライシングが、企業が最も優先して投資するべき熱い領域になる日も近いと言えるのではないでしょうか。(p.24)

 このように高橋氏は、企業が利益を上げていくにあたって、価格を上げることは非常に効果的であると説明しています。

 しかし、利益への影響が大きいとはいえ、値付けに対して顧客の納得が得られるかどうかを心配する人が多いのではないでしょうか。そんな悩みに対して高橋氏は、「バリューベースプライシング」の考え方を紹介しています。

バリューベースプライシングは、顧客が商品・サービスに対して知覚している価値を起点に価格を決めます。そのため、顧客の知覚価値が高ければ、仮に原価率が低くても、競合価値より高くても、知覚価値の範囲内で価格を上げることができ、なおかつ顧客の納得も得ることができるのです。(p.31)

 バリューベースプライシングにより、提供する商品・サービスの価値を価格へ転換することが可能になると高橋氏は説明しています。

顧客の知覚価値を上げて、価格に納得感を持ってもらう

 本書では、バリューベースプライシング活用の考え方を様々な事例を基に解説しています。その事例の一つが、「コカ・コーラ」のスーパーでの販売におけるプライシングです。2021年3月29日以降、500ミリリットルのペットボトルの代わりに350ミリリットルと700ミリリットルの2サイズのペットボトルで展開するようになり、そのプライシングが好評を得ているといいます。高橋氏は、その背景に知覚価値に基づいた判断があると見ています。

自宅で飲む場合、500ミリリットルボトルは1人だと飲み切れず、逆に2人だと物足りないという事態が想定されたようです。その上、スーパーで購買されるコーラは多くの場合、家庭で消費されるケースが多く、1人世帯や2人世帯の数が増加している背景も鑑みると、スーパーでの主力商品として500ミリリットルボトルが適さなくなっていました。こうした事情により、350ミリリットルと700ミリリットルのボトルが生まれたのです。(p.32)

 同社では、新サイズの導入後、ミリリットルあたりの単価が約1.2倍になっているにも関わらず、売上高は従来の約1.3倍になったといいます。またSNS上では、コカ・コーラの350ミリリットルペットボトルは「ちょうどいい」といった声が多く見られたそうです。

 このように、顧客の知覚価値が上がれば、値上げをしたとしても、顧客に受け入れられやすくなると高橋氏は説明しています。

  本書では、こちらの事例の他にも多くの事例を紹介。顧客にとって納得感のあるプライシングを行う具体的な方法をわかりやすく解説しています。自社商品の従来の値付けに懸念を 感じている方や、商品価値をより正しく価格に反映していきたいと考えている方は、参考として本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。

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この記事の著者

土屋 典正(編集部)(ツチヤ ノリマサ)

法政大学法学部を卒業。新卒で人材派遣の会社にて営業職を経験し、翔泳社に入社。MarkeZine編集部に所属。 

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/08/25 07:30 https://markezine.jp/article/detail/43173

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