リテールメディアはターゲティングよりもクリエイティブが重要
望月:現状のリテールメディア、特にオンサイトを活用する場合、ターゲティングはあまり必要ありません。というのもリーチが元々多くないところでターゲティングを設定してしまうと、リーチに対するコストが見合わなくなってしまうためです。
オンサイトで配信する場合は基本的にブロードリーチで十分で、「このような商品がありますが、どうですか?」と提案するイメージが重要です。
簗島:ユーザーを絞らず、魅力的な情報を提供することが重要ということですね。

望月:小売業界の方に話すと驚かれるのですが、クリエイティブの改善次第でCVRが30倍から50倍まで変化するんです。だからこそ、これまで購入したことのないポテンシャル層を含めてアプローチしたほうがいいと思います。
海外のリテールメディアはバナーが出ているだけなど、クリエイティブの工夫は少ないのですが、それはきちんとユーザーが数多く集まっているからで、ユーザーボリュームが出せない日本では新しい見せ方を考えないといけません。
海外のマネでなく、国内の事情を理解したメディア作りを
簗島:海外から入ってきたリテールメディアですが、国内は市場規模や売上の構成が異なるので、その点も留意してあるべき形を考えないといけませんよね。
アメリカではウォルマートなど一部の企業が一定のシェアを獲得しており、巨大なリテールメディアを構築できていますが、日本はそれぞれの地方に特化したスーパーが多く、顧客やデータが分散してしまっている特徴があります。
望月:以前弊社が独自に調べたところ、アメリカではウォルマートなどハイパーマーケットと呼ばれる業態だと、ウォルマートなど上位4社でマーケット全体の売上シェアの94%を占めており、非常に市場占有率が高い。ただし、リテールメディアという文脈でみると、また、小売業界全体で見るとAmazonが70%を占めており、ウォルマートは8%しかありません。 一方で、日本ではアメリカほど寡占化が進んでいないので、地域に密着したスーパーマーケットが強い傾向にあります。このように、海外と国内では市場が異なることを理解しておきたいです。
リテールメディアが注目されている今こそ、小売とメーカーのマーケターがリテールメディアの構造を理解が求められているように感じます。
簗島:あとは現在試行錯誤するフェーズだと思うので、とにかく始めてみることも重要ですね。
望月:初期投資のコストはそこまで大きくないですし、様々な企業が始めることで課題の解像度も上がっていくし市場も活性化します。まだ市場を立ち上げる段階にあるので、業界全体で取り組むことがリテールメディアの発展には重要だと思います。
簗島:現在望月さんとはリテールメディアに関する支援もご一緒しているので、今後も一緒に取り組みながら、まだ正解のないリテールメディアの領域で小売業界の新たな収益源を作っていけたら幸せですね。