ボトムアップにより、挑戦しやすい文化が根付くリクルート
──自己紹介をお願いいたします。
柴田:プロダクトデザイン部で飲食クライアントソリューション1Gのマネージャーをしています。飲食領域を担当し、『ホットペッパーグルメ』をはじめ、『レストランボード』、そして同サービスの機能の1つである『セルフチェックイン』など飲食店向けプロダクトの企画・開発や運用を主な業務としています。
岩田:弊社の新規事業提案制度であるRingで障がい福祉事業所向け業務支援サービス『knowbe(ノウビー)』を起案し、サービスをリリースしました。現在は、knowbe事業推進部の部長として、戦略策定やマネジメント全般を担っています。
──新規プロジェクトは、社内でどのように立ち上げるのでしょうか。
岩田:『セルフチェックイン』のように既存ビジネスから、新しい機能を開発しようとはじまる新規プロジェクトと、『knowbe』のように既存のリクルートのサービスにはまだない、新しい領域で事業開発をする新規プロジェクトが存在します。
どちらも企業や店舗、それらの利用者の方の声などを聞き、課題を見つけて「こういうサービスや機能があると解決できるのではないか」と提案します。当社では、新規プロジェクトをボトムアップで進めやすい文化があり、誰でも提案しやすい風土があります。
一人一人の現場の声を後押しする環境
──リクルートでのボトムアップの強みとは何でしょうか?
柴田:たとえば誰かが「こういうことをやりたい」と提案した時に、「うまくいくの?」「既存業務はどうするの?」「今やる必要あるの?」など懸念の声が第一声で出てくると、断念してしまうこともありますよね。ですが当社では、やることをいきなり否定されることはなく、背中を押し応援してくれるような文化があります。
岩田:もちろんプロジェクトを立ち上げる際は、ニーズがあるのか、カスタマー・クライアントに価値提供できるのかなど、情報収集をして説明する必要はあります。しかし経営陣もかつては現場に直接赴き、ボトムアップで提案する側にいたので、現場の声を拾い上げることを大切にしてくれています。
また、過去の経験から的確なアドバイスをくれることも、推進する上での力になります。
1人の思いが周囲を動かした『セルフチェックイン』プロジェクト
──具体的に携わられたプロジェクトについて教えてください。柴田さんが企画した『セルフチェックイン』とは、どのような機能なのでしょうか。また、立ち上げたきっかけを伺えますか。
柴田:『レストランボード』にある『セルフチェックイン』は、飲食店の配席を行う機能です。来店したお客さんに店頭のアプリを操作していただくことで、無人で席の案内が行えます。
これを提案したきっかけは、日々飲食店の方々と話していく中で「コロナ禍で雇用を減らしたが、客数が戻ってきたので人手不足となり業務が回らない」という声を聞いたことにありました。その時に、無人で効率的に配席できる機能があれば解決できると考えました。
──どのように周りを巻き込んだのでしょうか。
柴田:既存の業務もある中で、人手を確保しなければなりません。まずは、チームの業務にムダがないかを見直し業務改善を行いました。余力を捻出してプロジェクトを動かした形です。
──社内からの応援の声はありましたか。
柴田:はい。プロジェクトの構想をメンバーに話したら、エンジニアの1人が自主的にアプリを作ってきてくれました。当社には“新しいサービス・価値を創りたい”という気持ちを持って、アイデアにどんどん参加してくれる人が多いように思います。
──その後、どのようにして進めていったのでしょうか。
柴田:草の根活動のように周囲に伝え、ニーズや価値を理解してもらうようにしました。地道にヒアリングをし、説明するためのデータを集めました。また、それを社内でも積極的に共有していきました。
ある程度課題が明らかになってきたところで、MVP( Minimum Viable Product)を作り、今回の機能に共感してくださった飲食店でユーザーテストを行い、機能としての精度を高めていきました。
たとえMVPであっても、開発・リリースは承認に時間がかかったり、承認自体が下りなかったりすることもあります。しかし今回のプロジェクトでは、開発の範囲とリスク・対策を明確にし、その範囲から出ないことを約束することで、ある程度は自分自身で判断しながら進められました。
今後は、まだご利用いただけていない飲食店の方にも利用いただけるよう、このサービスを磨いていけたらと考えています。
徹底的な顧客理解から踏み切った方針転換。『knowbe』立ち上げの裏側
──岩田さんの手掛ける『knowbe』についても聞かせてください。どのようなサービスなのでしょうか、また、どのようなきっかけで立ち上げたのでしょうか。
岩田:『knowbe』は、障がい福祉事業所向けの支援サービスです。
当初は障がい者の方の就労支援を目的としたeラーニングサービスでしたが、現在は方針を転換し、障がい福祉事業所向けの業務支援サービスとなっています。
構想のきっかけは、友人がメンタル不調で会社を休職しまして。そこから「障がいがあることで、働きづらさを持っている人が、自分らしく働けるためにはどうしたら良いか」ということへの関心が強くなりました。多くの専門家の方や、障がい福祉事業所などの施設の方々にも話を聞いていく中で、福祉業界にも、業界の皆さんが解決したいと考える課題がたくさんあることがわかりました。
──どのように立ち上げていったのでしょうか。
岩田:まずリクルートの新規事業提案制度である、Ringに提案しました。開発の承認を得たのが2016年10月で、半年ほどかけてeラーニングサービスをリリースしました。
ご利用いただいた事業者様からは、ありがたいお声をいただけたものの、事業所あたりの利用者は数名程度にとどまっていました。このことから、より多くの方をご支援できるような方法が必要だと思うようになりました。
検証を重ねていくと、多様な利用者さんに向き合っている職員の方々が、煩雑な事務作業に時間を取られ、十分なサポートを行えない環境にこそ課題があるとわかり、方向転換を決意しました。
現場と経営陣、両者で議論を重ねて磨き込む
──方針転換は社内の合意を得るのも難しいように思います。どのようにして経営陣の理解を得ていったのでしょうか。
岩田:まず私たちは自分が見聞きしてきた現場の声と、定量的な数値、そして方針転換の必要性をしっかりと伝えました。そして、経営陣は私たちの声に耳を傾け、両者で議論を重ねていき、最終的には承認を得られました。経営陣への説明は一朝一夕で終わるものではありませんでしたが、この議論の中で私自身も事業の解像度を上げられ、振り返ると良い議論ができたと感じています。
その後、2018年1月に業務支援サービスとして『knowbe』をローンチしました。
──利用者の方からの反響はいかがですか。
岩田:利用している施設の方々からは「周辺業務が効率化されたことで、本質的な支援に時間を割けるようになった」とうれしい声を多くいただいています。
また、福祉業界は働き手不足も喫緊の課題です。職員スタッフの方々が働きやすい環境を作ることで、離職者を減らし、よりサステナブルな業界にしていくことも大切だと考えています。
誰もが「活躍できる」仕組みを作っていく
──お二人は、事業やグループをマネジメントし、チームメンバーからのボトムアップでの起案を受ける立場でもありますが、起案者をサポートする上で気をつけていることはありますか。
柴田:起案してうまくいくプロジェクトもあれば、思ったように成果が示せず失敗となるプロジェクトもあります。しかし、その企画が失敗となった理由に起案者が自分で気づけるところが財産になると思います。
私はマネージャーとして、そこに気づけるための伴走者となりたいと考えています。
岩田:現場の気づきを活かしつつ、その課題は「多くのお客様に共通しているのか」「解決した時に大きな価値を出せるのか」とメンバー自身が優先度の高いものと低いものを納得して判断するためのサポートを心がけています。
──社風の中でも、リクルートならではの特徴はありますか。
柴田:1人のスーパースターがプロジェクトを支えるのではなく、誰もが活躍できるような仕組みがあることですね。どんな人でも活躍できるようにしています。
岩田:新規プロジェクトの起案についても、ユーザー調査の方法や、解決策を考えるための方法などが型化され、ナレッジとして展開されています。また過去のRingに起案された内容などを積極的に情報交換をするほか、勉強会など座学として学べる場もあるため、起案しやすい面もあると思います。
──最後に、今後の展望についてお聞かせください。
柴田:僕自身は、世の中をよくする人材をより多く輩出することが大事だと考えています。そのために、短期間できっちりそれができる人材を育てていきたいです。
岩田:障害福祉業界には、まだまだたくさんの課題があります。『knowbe』の提供価値を広げ、業界がサステナブルな形になるような「未来の当たり前」を最速で作っていきたいです。
リクルートはプロダクトマネージャーの採用を強化中
リクルートは、既存サービスや新規事業の商品・プロダクトの戦略立案、戦術策定を行うプロダクトマネージャーの採用を強化しています。
本記事を読んで気になった方は、リクルートプロダクトデザイン室のHPをチェック
また、プロダクトデザイン室での取り組みを知りたい方は、ぜひ公式noteのフォローをお願いします。