瞬間UXを積み上げ、全体の体験(CX)を作るには
本連載の第2回と第3回では、人間が瞬間的に意思決定を行う「瞬間UX」について紹介しました。
第4回となる今回は「習慣UX」についてです。一つひとつの行動変化を積み上げ、結果として全体の体験が創出される行動中心設計のアプローチにおいて、瞬間UXが行動の最小単位となります。この最小単位の行動を積み上げていくために重要なのが、習慣UXです。最小単位の行動を変革し(瞬間UX)、それを継続していく(習慣UX)ことで全体の体験(CX)が設計されます。
習慣UXは、瞬間的な意思決定を行う早い思考(システム1)とは異なり、遅い思考(システム2)のウエイトが高くなります。意思決定には心理状況・性格・価値観など多くの要因が影響するため、より本質的な人間理解が求められるのです。
「粘着質に行動し続けたくなる」メカニズム
行動し続けるという意思決定は、人間の性格や特性の影響を強く受けます。心理学の分野では、個人の性格に関する学説に「ビッグファイブ」という考え方があります。人の性格は5つの因子「開放性」「誠実性」「外向性」「協調性」「神経症的傾向」によって構成され、その強弱によって性格や振る舞いに違いが出るという考え方です。
たとえば、外向性が高い人は大人数との関わりを好む傾向があり、「一人で淡々とレベルアップをしていくゲーム」より「みんなでワイワイ一緒に遊べるゲーム」を継続するイメージです(あくまでわかりやすい形に解釈した例です)。このような人間の特性を理解し、特性ごとに効果的な動機付けの要素をデザインすることで、行動を続けることを促します。
心理学の分野では5つの特性因子が定義されていますが、行動中心設計においては「やり続けたくなる」が詰まっている「ゲームUX」の経験則をもとに、8つの人間属性という形で独自に因子定義をしています。
人それぞれ強弱はありますが、この8つの属性を誰もが持っています。これらの属性に対し効果的に訴求する要素をデザインすることで、継続的で“粘着質”な行動を喚起する習慣UXのアプローチにつなげていきます。ゲームUXの方法論のみを活用する従来のゲーミフィケーションではなく、ゲームUXの本質的な考え方まで拡張して活用する「ゲーミフィケーション2.0」ともいえる考え方です。