ユーザーの「やりたくなる」を生み出す企画の作り方
本連載では4回にわたり、「やりたくなる」をデザインする行動中心設計について紹介してきました。最終回となる本記事では、実際にフレームワークを活用した当社の取り組み事例を交えながら、行動中心設計全体を総括します。
今回は生活者の「やりたくなる」を設計するケーススタディとして、防災訓練をテーマに取り上げます。まずは目指すべきゴールを課題設定のフレームに沿って設定します。
この取り組みには「若年層に対し防災意識の向上を目指していく」という大きな方向性があります。そこで「Who:誰が」「When:どのシーンで」「Which:どの選択肢で」「Goal:何を選ぶべきか」の粒度で、防災訓練を通じて変容させたい行動レベルまで最小化して考えます。
今回は、防災訓練に「参加しない」「参加する」の行動選択肢から「参加する」を選択する、というゴールを設定。この課題設定を踏まえて、ユーザーが参加したくなるアプローチを考えていきます。
「ついやってしまう」を導くアイデア出し
連載の第2回で紹介した、「ついやってしまう」無意識な瞬間UXのフレームワークに沿って考えていきます。以下のワークシート中心に促したい行動をセットし8つの要素を掛け合わせ、アイデアが生まれるか試してみます。
以下は、各要素から出したアイデアの一例です。
・初期設定:最初から参加が前提になっている
・単純化/容易化:自宅ですぐにできる
・同調:あなただけ参加していないと告知する
・情報開示:迫っている未来の危機および影響度の情報を開示
・わかりやすさ:防災訓練で具体的に何を行うのかを明示
・リマインダー:開催日の前日に連絡を入れる
・フレーミング:特にアイデアはなし
・エラー予測:特にアイデアはなし
上記のアイデアを見る限り、単体の施策だけで無意識に「つい参加してしまう」行動変容を実現する難易度は高そうです。そこで次は、連載の第3回で紹介した意識的な瞬間UXによって「参加したくなる」行動変容が実現できるかを試みます。