「ファンになる」とは行動ではなく感情
ファンベースカンパニーでは、「ファンベース」という考え方の基、企業のマーケティングをサポートしている。なお、ファンベースとは、同社の設立者である佐藤尚之氏が提唱したもので、ファンを基点にして、中長期での売上や事業価値の向上を目指す考え方だ。
そんな同社の考える「ファン」の定義とは何か。本セッションのスピーカーである津田氏は、「ファンとは、企業やブランドが大切にしている価値を支持してくれる人」と明確に述べた。
「ファン=大量に商品・サービスを購入してくれる人」と皆、思いがちだろう。しかし、「そうではない」と津田氏。ファンと非ファンの主な違いは、消費という「行動」よりも、むしろブランドに対する好意や愛着といった「感情」がともなっているか否かなのだ。
「ブランドのミッション・ビジョンに共感したり、そのブランドの背景や努力を理解し、応援・支持してくれたりする人が、長く、深くブランドを愛してくれる『ファン』なのです」(津田氏)
感情を可視化する独自指標「ファン度」
では、どうすれば消費者にファンになってもらえるのだろうか。津田氏は「『行動』と『感情』の2軸で考えれば良い」と提案。行動軸は「購入商品」や「支出額」「来店頻度」など既にデータ化されていることが多い一方、感情軸はなかなか可視化しづらい。そこで、ファンベースカンパニーでは「ファン度」という新しい指標を考案した。
ファン度は二つの質問で測れるという。一つ目は現在のブランド好意度を聞くもので、選択肢は「正直言って好きではない」から「『愛がある』と言えるほど大好き!」までの7段階で構成される。
二つ目の質問はファンとしての深さを探るもの。具体的には、今後ブランドとどのような関係を築いていきたいかを尋ねる。この質問によって「ファンではない」層から「ファンになりたて」もしくは「ファンとして定着している」層、「人生の一部、未来を一緒に創っていきたい」層までカテゴライズする。
さらに、これら二つの質問の回答を基にして「未ファン」「ライトファン」「ファン」「コアファン」の四つに分類。これを「ファン度」と定義している。
なお、ファン度と売上の間には相関関係があることもデータで示されている。津田氏は、読売巨人軍のファンクラブ会員を対象とした調査(2020年7月ファンベースカンパニー調査、日経クロストレンドの記事より)の結果を引用し、コアファン層がライトファン層に比べ、平均して約1.7倍消費していることを紹介した。