“裏側”を見せて、より高次元の価値を伝える
では、ファン度を高めるため、企業やブランドはどのような姿勢で臨めば良いのか。津田氏はポイントを二つ挙げた。
第一のポイントは「ファンがどの部分に価値を見出しているのかを理解すること」だ。「ファンがブランドを好きになるのには理由がある。その理由を知ることは極めて重要だ」と津田氏は強調した。
なお、ファンが感じる価値には「機能価値」「情緒価値」「未来価値」の三つが存在するとのことだ。
アーティストを例にとると、機能価値は「楽曲の素晴らしさ」や「見事なパフォーマンス」といった価値を意味する。しかし、機能価値だけでは、他に魅力的な選択肢が現れた時にファンが離れてしまうリスクがある。
そこで「『長年応援してきたから、愛着を感じる(情緒価値)』や『推しのアーティストの夢に期待して支持する(未来価値)』など、より高次元の価値を感じてもらい、ファンの感情を深化させる必要がある」と津田氏は説明した。
なお、ファンに高次元の価値を感じてもらう方法として「企業やブランドの“裏側”を見せると良い」と津田氏。
「企業・ブランドには、これまでに積み上げてきたものがたくさんあります。ビジョンやミッション、歴史、地域貢献などの“土台”があって、その成果として商品・サービスが世に出ているわけです。こういった土台にこそ、情緒価値や未来価値の種が埋まっています。しかし、生活者は表に出ている部分しか見えていません。そこで、ブランドの裏側にある努力や苦労、人柄、人格などを伝えると良いでしょう」(津田氏)
ファンに“買わせよう”と思っていないか?
ファン度を高める第二のポイントは「価値は企業が提供するものではなく『顧客が感じるもの』と正しく認識すること」だという。
というのも、ブランドの魅力という点で企業とファンの間では、認識にしばしばギャップが生まれるのだという。「企業側の『これがファンの好きな点に違いない』という思い込みは一旦隅に置き、実際にファンの声を聞いてみることが重要だ」と津田氏は助言した。
なお、ファンと向き合う際に気をつけるべき点があるという。それが、ファンに自社の商品・サービスを“買わせよう”という姿勢で臨まないことだ。
「『何かモノを買わせよう』という姿勢でファンと向き合うと、その姿勢は容易く見破られてしまうでしょう。そのため、我々も『ファンにする』『ファン化させる』といった言い方はしていません」(津田氏)