※本記事は、2023年9月刊行の『MarkeZine』(雑誌)93号に掲載したものです
CriteoのGDPR制裁金と、MediaMathの破産申請
2023年6月に発表された「CriteoへのGDPR制裁金4,000万ユーロ(約60億円)」と「MediaMathの破産申請」は、個人情報保護の法改正の影響により、アドテク界隈で氷山の“一角”どころでなく、ついに氷山自体が動き出した様子を示している。
CriteoのGDPRガイドライン違反を指摘したフランスのデータ保護機関(以下、CNIL)は、次の5つの項目を制裁の対象とした。「データ主体」とは、消費者=ユーザー個人を指す。
- データ主体が同意したことを証明できていない
- 情報に対する義務および透明性に対する義務の不履行
- データ主体からのアクセス権の尊重の不履行
- データ主体の同意の撤回およびデータ消去の権利を遵守していない
- データ主体との協働管理者(パートナー)間の合意に関する規定の不備
今回、制裁金をCriteoに発令したのはCNIL(フランス)だけだ。言い換えれば、EUのGDPR圏内で他国に飛び火する可能性を含んでおり、米国カリフォルニア州のCCPA違反として同様の(それ以上の)訴えが発生する可能性もある。日本(企業)も導火線の上にいる。
Criteoの収益規模は、2022年の総利益が1,030億円(前年2021年は1,020億円)、純利益が14億円(2021年は180億円)というサイズである。2022年の純利益14億円は、CNILから通知された制裁金(当時約83億円)を「潜在的な金銭的制裁コスト」として前倒しで計上した結果だ。売上に相当する総利益は2021年と2022年でほぼ同じサイズなのに、ボトムの純利益が180億円から14億円に激減しているのは、この制裁金の事前計上が大きい。とはいえ、純利益に足し戻しても97億円であり、前年度から半減している様子にも気づいておこう。
もう1つのMediaMathは説明するまでもない、DSPの老舗で大御所だ。ノスタルジーに浸る必要はないが、同じDSPのSizmekが2019年に破産申請とともにAmazon Ad Serverに吸収されたことも思い出される。MediaMathには累積で6億ドル以上の資金が集まり、企業価値は10億ドルをつけていた時期もあった。「DSPという事業モデルもオワコンか」と簡単に片づけずに、「なぜ(オワコンなのか)」「ならばどうするか」を考えたい。