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MarkeZine Day 2023 Autumn

KINCHOと日本ハムに聞く“違和感×寄り添い”の広告作り SNSで話題にされる秘訣を紐解く

 SNSで大きな話題となった広告はどのように作られたのか。日本ハムの「シャウエッセン」と「KINCHO」の愛称で知られる大日本除虫菊は、変わったプロモーションを行ったことでSNSでの話題化に成功してきた。MarkeZine Day 2023 Autumnには、日本ハムの長田氏と、大日本除虫菊の上山氏が登壇。広告マニアとしてこれまで広告巡礼を行ってきた広告ラボ編集長の加藤氏をモデレーターに、話題になる広告作りの裏側や考え方について議論を行った。

SNSでの話題化が求められる広告施策

 企業が消費者から認知を獲得していくにあたって、広告のSNSでの話題化が無視できない要因になっている。その結果、変わった演出の広告がSNSで話題になり、認知を拡大していくという事例が数多く見られるとモデレーターを務める広告ラボの編集長を務める加藤氏は解説した。

株式会社ビズパ ビジネス推進部マネージャー 兼 広告ラボ編集長 加藤誠也氏

 では、話題化に成功している広告にはどのような設計や背景の考え方があるのだろうか。

 まず、日本ハムのマーケティング統括部でブランド戦略室兼マーケティング部長を務める長田昌行氏が、同社の商品「シャウエッセン」の包装形態変更のプロモーションについて、コンセプト作りから設計を具体化するまでの考え方を説明した。

日本ハム株式会社 マーケティング統括部 ブランド戦略室 兼 マーケティング部長 長田 昌之氏

 「1985年に発売されたシャウエッセンですが、長年同商品は巾着型のパッケージ型で店頭に置かれ、親しまれてきました。しかし、昨今の持続可能な社会作りの取り組みの一環として、2022年2月、プラスチック使用量を28%抑えたエコな形に改善しました」(長田氏)

 この取り組みによって初年度は248トンのプラスチックの削減に成功した。しかし、この事実を発表しただけだと、「シャウエッセンがエコパッケージを作りました」という小さな話題だけで終わってしまう。そうならないために、コンセプト設計では二つのポイントがあったと長田氏は語る。

見た人に驚きを与えて760万回再生された“シャウ断髪”

 一つ目は、一度驚きを作ること。

 「多くの企業が商品を改良した時にストレートにメッセージを伝えてしまいがちです。しかし、これでは当然、ほとんどの人の気に留まることなくスルーされてしまいます。そこで当社は、巾着の部分がなくなることを、相撲力士が引退する時の『断髪』という言葉にかけました。こうして、プロモーションを見た人に『どういうことなのだろう』と思わせるフックを作りました」(長田氏)

 このように、違和感がある表現から生まれるインパクトで興味を持ってもらい、話題化してもらうという仕組みを作り上げた

 二つ目に、ファン視点の言葉であることも重要だという。

 日本ハムは生活者から調理の簡便化が求められる流れの中で、以前は推奨していなかったシャウエッセンのレンジ調理を2019年に解禁した。その際には「シャウエッセンは手のひらを返します」というある意味「大げさなコピー」を用いて反響を得た。長田氏は「発売から長年、守り続けてきたものがある。大きなこととして捉えて成功した事例」と分析する。今回のパッケージ変更も、慣れ親しんだ形から変わってしまうことに対するファンの想いに向き合った言葉を意識した。

 その結果、「断髪式風」のCMは特に大きな話題を呼び、Web動画は760万回再生。公式SNSでも2万件以上拡散し、消費者のポジティブな反応も多く見られたと言う。

 長田氏はこの反響を「狙い通り」とし、その背景を「30年以上同じパッケージで提供しており、他社のウインナーも巾着型が当たり前。そのことからもテスト販売すると売り上げが落ちる懸念があり、一気に認識していただくために、どうしても話題作りが必要だった」と語った。

 さらに、新聞でも「はじめまして、シャウエッセンです。」というコピーと共に広告を全国5大紙に展開。「力士が引退した後のように、新たな顔でリスタートする」という企業の意思表明を込めた表現だ。

 この広告のポイントは「真面目に不真面目」だと加藤氏。CMで巾着部分を切るために使われているのは、実際に日本相撲協会の断髪式用のハサミだ。この表現に対して「挑戦できる社内の環境があったことも良かった」と振り返る。

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/11/22 09:00 https://markezine.jp/article/detail/43605

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