社内と代理店の垣根を越えて一つのチームに
続いて加藤氏は、2社の「代理店とのチーム作り」について探った。KINCHOは「超難解折り紙。」の広告を例に説明した。新聞を折り紙のようにして折っていくと“ゴキブリ”が完成するという広告だ。
“ハエや蚊を退治するもの”というイメージがある「キンチョール」がゴキブリも駆除できる製品だということを新聞で訴求するために代理店に相談し、チームで得られたアイデアだったという。
SNSで拡散されるには、実際に折ってもらいゴキブリが完成して「こんなものができた」と投稿される状態を狙いたい。そこで折り方の動画を作ったところ、60分弱の長編動画になった。ここまでやり切ったのも「具体化するときは、いかに消費者に伝えきるかを考えてフォローするのが重要だから」と上山氏は言う。長編動画も含めて話題となり、掲載月のサイトアクセス数は約36万件と成果にもつながった。
ここにもキンチョールの宣伝文句はあまりなく、チャレンジングな広告に思える。上山氏「当社はキンチョールをひっくりかえして『ルーチョンキ』と読ませる広告などが昔からあり、多少のことでは誰も怒らない。50年前から風土がある」と、挑戦できる文化の存在を語った。
広告会社と共同関係を築いてブランドへの解像度をアップ
一方で日本ハムと代理店のチーム体制も特徴的だ。広告主がオリエンテーションで表現したい内容を伝え、それを基に代理店が提案するという流れが一般的だが、「これだとブランドに対する理解が浅いままになり、認識のズレた提案をされてしまうこともある。協力関係ではなく『協働関係』の位置づけで代理店に最初から入ってもらう」と長田氏。商品施策・マーケティング分析の段階から一緒に取り組むことで、ブランドへの理解が深まり、メーカーだけでは気づかなかった視点で指摘してもらえると言う。
「当社だけでプロモーションを考える際には、主力商品であるシャウエッセンのことを“王道”や“キング”として表現してしまいがちでした。しかし、代理店側からも『もっとユーザーに寄り添った言葉にしたほうが良い』と提案していただきました。このように、商品施策やマーケティング分析の段階から社外の視点を取り入れていくことが、独りよがりなプロモーションを防いで多くの方から共感を得るためには重要になると考えています」(長田氏)
最後に、長田氏は次のように話して本セッションを締めくくった。
「SNSの反応を活用する広告は、テレビ広告の代替と捉えられがちです。しかし、話題作りや違和感に敏感に反応してもらえると言った点で大きな違いがあり、おもしろいと感じています。これからも多くの方に注目して、慣れ親しんでもらえるように積極的に活用していきたいと思います」(長田氏)