AIを活用した制作支援やコンシェルジュ……事業領域での可能性は?
野口:ここまでは、マーケター個人の生成系AI活用について話してきました。事業目線ではどうでしょうか?
けんすう:2つご紹介しましょう。まず1つ目は、私たちが集英社の少年ジャンプ+編集部と一緒に作っている「Comic-Copilot(コミコパ)」です。裏側ではChatGPTのAPIなどを使ってプロンプトが仕組まれている、マンガに特化した制作支援サービスです。

けんすう:このようなサービスは簡単に作れるのですが、大切なのは誰がやるのか、つまりブランドだと思います。マンガでは世界のトップランナーである集英社の少年ジャンプ+編集部と一緒にやるところがポイントです。ブランドのおかげで、漫画家さんも安心して使ってくれます。
2つ目は、じゃらんさんが提供している「AIチャットでご提案」。これは個人的によく使っているサービスです。「来月の3連休で、東京から1時間半以内の温泉宿」など条件を入力して、希望に添った宿を検索できます。
これまでなら、東京から1時間半以内でといった条件の設定ができず、箱根とか熱海とか場所を知らないと宿を探せませんでしたよね。それが可能になり、非常に便利なツールです。
野口:こういったコンシェルジュ的なAIサービスは今後もたくさん出てきそうです。特にフィットしそうなのは、検索項目が細かいものでしょうか。
けんすう:そうですね。あとは、あまりユーザー側にこだわりがないケースも挙げられます。「明日、六本木でランチ。3人で、予算2,000円以内ならどこでもいい」といった条件での探し方は、AIのコンシェルジュサービスと相性が良いといえます。
ChatGPTと付き合う上で、プロンプトよりも大事なのは?
野口:続いて、マーケターはAIをどう使うべきかアドバイスをいただけますか?
けんすう:ChatGPTを個人で使う場合、先ほどお話しした情報の要約に非常に役立ちます。インプットの速度を飛躍的に効率化できますね。
プロンプトの実例を知りたいとよく聞かれますが、私はプロンプト自体にはそこまで価値がないと考えています。重要なのは、どう会話するかです。私の場合はシンプルで、たとえば「ライセンスビジネスでうまくいっている企業はどこがありますか?」と聞き、出てきた回答を掘り下げていく使い方をしています。
「難しいので、中学生でもわかるように教えてください」と聞くこともあります。優しく教えてくれる人が隣にて、ひたすら質問するイメージです。

野口:誰かに向けて依頼書をきっちり間違いなく書くのが長文のプロンプトのイメージです。一方けんすうさん式はAIに少しずつ依頼して、進行しながら補正して、時に励ます対話型ですね。後者のほうが、望むものにたどり着く確率が高そうです。
そういえば「びっくりマーク(!)」を入れて質問すると、AIもびっくりマークで返してくれますね。
けんすう:びっくりマークや敬語を使うことは大事です。勢いも出るのか、出力される内容が少し増えている感覚はありますね。
野口:人間と一緒でおもしろいですね。意図する通りに動いてもらうポイントが、ChatGPTにもあるわけですね。
けんすう:インプットをメインに話しましたが、アウトプットについて「こう伝えたいが、どのように伝えるのが良いか」といった部分を頼ることもできます。プレゼンの短いまとめなども、自分で考えるよりChatGPTに何パターンか案を考えてもらうほうが速いかもしれません。
野口:私もセミナーの概要文などにはChatGPTを使っています。マーケターを含め、社会人の時間短縮という点では確実に効いてくるでしょうね。