データの“量”が足りない分は、定性調査でカバー
次に浜辺氏は、ロイヤルユーザの理解に向けた分析フローを紹介した。
この分析においても、「クラブサンスター」の会員と、外部の購買データのユーザとで重複しているユーザに着目。外部購買データにおける購入金額平均値と重複ユーザにおける購入金額の平均値を比較した結果、重複ユーザの年間購入金額およびロイヤルユーザ出現率が2倍以上高いことがわかった。
ただ、これだけではアクションに繋げられないため、購入金額や購入個数の多いロイヤルユーザを選定してN1インタビューも実施。すでに今年度だけでも数十名にインタビューをしているという。
N1インタビューに力を入れている理由について、浜辺氏は「現状有しているデータの量だと、定量的に分析しても想像の域を出ない顧客理解しか得られず、アクションに繋がりません。まずはN1インタビューで仮説を得た後に、それに基づくデータを取得していくというアプローチの効率が良いと考えています」と説明する。
こうした取り組みにより、ロイヤルユーザの理解を蓄積し、他の事業部においても参考になるような顧客情報基盤を作っていくことが当面の目標だそうだ。
顧客体験の向上とデータ活用の両輪を回していく
メーカーにおいては、CDPの導入・活用のメリットや意義がはっきりしないこともあるだろう。浜辺氏は、メーカーのCDP活用の本質について次のように話す。
「お客様からデータを取得し、分析していくためには、お客様に『データを渡しても良い』と思っていただくことが必要です。だからこそ、メーカー側は価値のある体験を提供していくことが必要不可欠だと感じています」(浜辺氏)
そのためには、顧客理解の深化と価値ある体験提供を連動させ、サイクルとして回していかなければならない。このサイクルを回すことで、顧客の解像度がどんどん高まり、全社で活用できる顧客情報基盤へとCDPが進化し続けるのだ。メーカーがCDPを導入し、活用する意味はここにある。
サンスターの場合、会員コミュニティ「クラブサンスター」は、データを取得しながら、より良い顧客体験を提供するための重要な接点だ。「このコミュニティ内でカスタマージャーニーを内包しながら、顧客接点を創出し、並行してデータを取得できる仕組みも作っていきたい」と浜辺氏。
たとえば、オーラルケア事業でいえば、セルフケアから始まり、何か悩みが生じたらプロによるアドバイスを希望し、そのアドバイスのもとアイテムを購入するといったカスタマージャーニーがある。それらに合わせて、サービスやコンテンツを提供し、顧客データの取得および顧客理解に繋げていくというイメージだ。
最後に浜辺氏と支援を行うインキュデータの芦沢氏は次のように今後の展望を語った。
「顧客体験そのものを良くしていくために、データをお客様に還元していく活動にも取り組んでいきたいと考えています。具体的には、何か課題や悩みのあるお客様には、セルフケアの方法などお役に立てるコンテンツをタイムリーに提案したり、適切なアイテムブランドを提案したり。こうした体験を実現できると、製品の満足度も高まっていくはずです。顧客体験をアップデートしながら、お客様のオーラルケアやヘルスケアの不安や不満を解消していけるようなサイクルを作っていきたいです」(浜辺氏)
「サンスター様とのプロジェクトでは、様々な取り組みを行っていますが、今後も引き続き顧客理解の深化というテーマをもとに、サンスター様のユーザへの提供価値に還元できるような仕組み作りの実現に向けて、ご支援させていただきたいと考えております」(芦沢)
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インキュデータはソフトバンク・博報堂・トレジャーデータの3社により設立され、顧客データを起点にデジタルトランスフォーメーションを支援しているプロフェッショナル集団です。インキュデータが手がけたDX事例や顧客データ基盤の構築事例、業界別最新マーケティング事例などを資料で公開しています。