データ収集・分析の後にぶつかりがちな意外な課題
講演では、CDPを活用して実施している施策例として、2つの取り組みが紹介された。
1つ目は、自社EC会員の解像度を上げるための取り組みだ。CDP導入時のデータ統合により、自社EC会員と「クラブサンスター」のコミュニティ会員をまたいだ分析が可能に。この2つの会員データを照らし合わせて分析したところ、両方に登録して利用してくれている会員がいることが判明した。
そこで、両方に登録している会員に着目しさらに分析を進めると、それらの会員ユーザは自社ECでの年間購入金額、購入期間が長いことが判明したという。これがCDP活用により最初に得られた発見だった。
「この発見を起点に、重複登録の会員ユーザをロイヤルユーザと仮定し、彼らがどのような顧客なのか、サンスターのどのような点に魅力を感じて長い期間利用して下さっているのかを分析していきました」(浜辺氏)
まず行ったのは、CDPに備わっている機械学習の機能を活用した分析だ。重複登録の会員ユーザに見られる特徴を機械的に抽出していったが、ある課題にぶつかる。
「機械学習で特徴を出すことはできたのですが、そこで得られた特徴は既にわかっていたことが多く、次のアクションには繋げられませんでした」と浜辺氏。たとえば、年齢が高いユーザほど年間購入金額が高いという傾向だったり、登録期間が長ければ長いほど購入期間も長いという傾向だったり、想定範囲内の特徴しか得られなかったという。
行動ログのN1分析を行い、仮説を抽出
その後、浜辺氏はアプローチを変更。重複登録の会員ユーザ一人一人の行動を分析し、何が購買のドライバーになっているかの仮説立てを進めていくことにした。
そうして行動ログを分析したことで、浜辺氏のチームはユーザが製品を購入する直前に発するあるシグナルを見つけたという。セッションではあるユーザの行動履歴を例に、顧客像を肉付けしていく様子が紹介された。
「たとえば、このユーザは、健康食品を購入する手前で、『運動不足のコラムを読む』といった、健康意識が高まるような行動をしていました。このことから『長期間会員組織に所属していただいている方は、健康に不安を感じるタイミングがあると、製品の購入してくださるのかもしれない』と考え、『お客様に合ったタイミングで製品を提案できれば、その後ロイヤルユーザになっていただける可能性が高いのでは』という仮説を打ち立てました」(浜辺氏)
上記はあくまでも一例で、浜辺氏のチームはこうした仮説をいくつも立て、日々検証に取り組んでいる。今後は購入後のブランド体験を分析し「どんなブランド体験があれば、ロイヤルユーザになるか」を明らかにしていくのだという。
また、これらの分析から得られた示唆や仮説は、他事業部でも様々な施策に活用できるよう抽象化した上でフォーマット化し共有するなど、拡張性や再現性のある取り組みにする工夫もしている。なお、こうした横断的なデータ活用を行うための戦略策定からチームビルディング、実際の基盤構築まで、インキュデータが幅広くサポートをしているそうだ。
データ活用による企業の変革を支援
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