電通デジタルは、企業のマーケティング活動を統合的に支援する新たなAIサービスブランド「∞AI(ムゲンエーアイ)」として、4つのサービスの提供をスタートした。
サービス開始に合わせ、同社は2023年10月5日(木)に「AI事業戦略発表会」を開催。まず同社の代表取締役社長執行役員 瀧本恒氏が、AI事業における戦略や展開について説明した。
同社はメディア&コミュニケーション・クリエイティブ・トランスフォーメーション・テクノロジートランスフォーメーションの4つの事業領域にわたって企業を支援。2023年4月にdentsu JapanのAI専門会社であるデータアーティストを合併し、2024年には全社横断のAI組織を新設するなど、AI領域における取り組みを加速させている。
AIでマーケティングを支援する新ブランド「∞AI(ムゲンエーアイ)」
続いて、同社の執行役員 データ&AI部門長 山本覚氏が、新たなサービスブランド「∞AI」について紹介した。
同ブランドのサービスは、生活者が商品・ブランドを発見し、理解し、ファンになることをサポートする3つのAIアプリケーション「∞AI Ads(ムゲンエーアイ アズ)」「∞AI Chat(ムゲンエーアイ チャット)」「∞AI Contents(ムゲンエーアイ コンテンツ)」と、それらの基盤となるプラットフォーム「∞AI Marketing Hub(ムゲンエーアイ マーケティング ハブ)」から成る。
広告クリエイティブ制作を支援する「∞AI Ads」
「∞AI Ads」は、デジタル広告クリエイティブ制作の4つのプロセス「訴求軸発見」「クリエイティブ生成」「効果予測」「改善サジェスト」ごとに搭載された各AIが一連の流れを支援し、バナー広告や検索連動型広告の改善に寄与するアプリケーションだ。同社が2022年12月に発表した「∞AI(ムゲンエーアイ)」から改名およびサービスのアップデートを行い、本格提供を開始した。
アップデートにより、対応する広告配信プラットフォームを拡大。またすべての工程において、従来のバナー広告に加えて検索連動型広告への対応が可能になった。
同社は今後に向け、広告バナーの自動生成と動画広告の効果予測を開発しており、PoC(実証実験)を通じて順次提供予定となる。
自社データを組み合わせ対話型AIを構築できる「∞AI Chat」
「∞AI Chat」は、企業の持つデータを活用し、ユーザーにパーソナライズした対話型AI開発を支援するアプリケーション。参照する企業の独自データをCSVやpdf形式でアップロードすることで、スムーズに対話型AIを作成することができる。アップロードされたデータは自動で構造化(重要な情報のみ抽出)され、対話の精度向上やLLM(大規模言語モデル)使用コストの削減が可能となる。
作成された対話型AIはWebサイトやLINE、Teams、Slackなどのコミュニケーションツールと接続でき、社内利用も可能だ。顧客や従業員とのコミュニケーションの質と効率の向上を支援する。
さらに同社は、対話型AIに用いるキャラクターの性格設計やチャット画面のUI/UXデザインの支援、プロンプトインジェクションやハルシネーションなどAIにおける課題の対策コンサルティングなどの実装支援も提供していく。
今後は、限られた時間内での営業活動の効率化を支援する「∞AI Chat for Sales」、コンタクトセンターにおけるWeb上での接客などを支援する「∞AI Chat for Contact Center」など、より専門性の高いバージョン展開を予定している。
AIにクリエイティブアイデアを組み合わせる「∞AI Contents」
「∞AI Contents」は、AI活用によるバーチャルヒューマンやオウンドメディア構築など、ユーザーエンゲージメントを高めるサービス・プロダクトを提供。同社の500人を超えるクリエイターが、プランニング並びに実装支援を行う。
同アプリケーションは、過去の会話データや企業データに加え、対象者の表情や仕草、声サンプルをAIに学習させることで自然な会話を実現するバーチャルヒューマンを生成できる。リアルタイムでの質疑応答ができ、より人間らしい対話でユーザー体験価値の向上を図ることが可能となる。
AIとデータの統合プラットフォーム「∞AI Marketing Hub」
「∞AI Marketing Hub」は、生成AIのパフォーマンスを高めるためのプラットフォームだ。多様なデータを一元管理できる「データハブ」と、データハブ内のデータを処理し目的に応じたAIの選択・統合・制御を行う「AIハブ」で構成される。
「データハブ」は、国内電通グループが保有する広告配信データやソーシャルリスニングなどのトレンドデータ、パネルアンケートや実施調査によるナレッジデータを蓄積・連携。企業が保有するファーストパーティデータとの接続も可能で、様々なデータを一元的に活用することができる。
「AIハブ」は、データハブで取得・連携したデータを処理し、データの整理や画像・テキストを生成する。ChatGPTなどのLLMや画像生成AIなど多様なAIにアクセスでき、企業の目的に応じて最適なAIの選択・統合・制御を行う。またログ解析を通して、アウトプットの効果最大化を実現する。
これら2つの機能をシームレスに連携させることで、企業の広いニーズに対応。各種AIサービスの導入・運用にともなう、コンサルティング・システムインテグレーション・運用サポート・クリエイティブプランニングなどの付帯サービスも提供していく。また「∞AI」内のアプリケーションの基盤としてだけでなく、企業独自のサービス開発の基盤としても活用できる。
今後は既存のLLMに独自のデータを学習させ、より企業のニーズに対応できる電通デジタルカスタマイズのLLMの開発・展開を予定している。
最後に山本氏はAI利活用のサイクルを回す重要性について言及し、同ブランドを「人間活動を最大化」するためのものと位置づけ、会を締めくくった。
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