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MarkeZine Day 2023 Autumn(AD)

CVRを維持したままメール開封率が1.58倍に!ビービットが語る、ChatGPT時代のEC運用

 2023年、あらゆるメディアで生成AI関連のニュースが飛び交い、ビジネス現場でも生成AIの活用が急速に進みつつある。しかし、EC業界においては「AIで売上が上がるのか」と懐疑的な目もあり、積極的な活用が進んでいない状況だ。その中で小売/EC業界を含めた企業の良質な“UX実現”に向けた支援を行うビービットの生田啓氏は、MarkeZine Day 2023 Autumnに登壇し「AIと向き合っていくべき」と語った。本記事では、講演の中で語られたAIの進化がECビジネスに与える影響や、事業者が今すぐ取り組むべき準備や対応についてレポートする。

生成AI、本当の勝負は「対 顧客」での活用

 「ECとAIの新しいカタチ - ChatGPT時代のEC運用」と題した本セッション。冒頭「AIは『産業革命に匹敵するインパクト』があり、使い方次第で大きな売上拡大が見込めるパワーを持っています」と語ったビービットの生田氏は、小売/EC業界におけるAI活用を考えるにあたって、改めてAIとは何か、その活用状況はどうなっているのか振り返るところから始めた。

株式会社ビービット ソフトウェア事業本部 マーケティングソリューション セールス&マーケティングマネジャー 生田 啓氏
株式会社ビービット ソフトウェア事業本部 マーケティングソリューション セールス&マーケティングマネジャー 生田 啓氏

 今やほとんどの人が知っているであろう生成AIという言葉。実際には様々な種類があるが、昨今話題のGPTは大量のテキストデータを使ってトレーニングされた自然言語処理のモデル(LLM:大規模言語モデル)に該当し、その中でChatGPTはブラウザでチャットのように使えるようにしたサービスである。

 生田氏によると、生成AIの活用は大きく3つの段階に分けられるという。第1段階は「対 個人」で、個人が生産性を向上させるための活用。第2段階は「対 業務」で、企業内の業務プロセスの品質および効率の向上に生成AIを使う。アイデアの壁打ちやエクセル集計の効率化が例として挙げられる。第1・第2段階に関しては、すでに活用アイデアも出揃っており、容易に実施できることから多くの企業が取り組んでいる。

 そして、第3段階で最も重要でありインパクトが大きいと考えられるのが「対 顧客」だ。つまり、エンドユーザーに対して提供するサービスでの生成AIの活用だ。ベンチャーキャピタルの主な投資対象となっている領域で競争が激化しつつある。この第3段階は市場原理を大きく変える可能性があり、取り組みの緊急度・難易度も高くなっているという。

生成AI活用における3段階
生成AI活用における3段階

生成AIは、ECのビジネスモデル自体を変える

 生成AIの現状を振り返った後、生田氏はECにフォーカスして話を進行。ECではどのように生成AIが使われ、ビジネスがどう変わっていくのかに関する仮説を3つの段階に分けて解説した。

 第1段階はデザインやコーディング、コンテンツ制作などの自動化が該当する。具体的にはECで使うバナーや画像、配信メールやメッセージなどをAIが生成、アイデア出しをすることだ。すでに実際に取り組んでいる企業もあるのではないか。

 続く第2段階はインターフェースの刷新。購買プロセスや商品選定がチャット形式で完結するようになったり、特定のエージェントアプリがすべての検討・購買プロセスを集約するようになったりする。

 そして第3段階は提供価値やビジネスモデルそのものの刷新など、より奥深い変化が挙げられる。たとえばECの場合、AIがユーザーの代わりに商品を選びレコメンドするため、AIに選ばれるための対策が必要となるだろう。また、制作やFAQ、サポートなどに人・コストを割く必要がなくなるため、コスト構造が大きく変わる可能性もある。

 インターフェースの刷新はコミュニケーションをスムーズにし、顧客が満足できる体験の提供に貢献する。また、ビジネスモデルの刷新によってビジネス成長のチャンスもあるだろう。スマートフォンが登場し、それまでPCでは取り込めなかった潜在顧客を獲得できたときのように、生成AIは既存顧客に対してよりリッチなサービスを提供するだけでなく、潜在顧客の新しいペインを解消し、新たな価値提供ができる可能性があるのだ。

 「ECにおけるAI活用は、現在は第1段階にあります。第2段階のインターフェースの刷新は、数年以内に起こることが考えられます。そのため、今からその変化に備えつつ、最終的には第3段階の提供価値やビジネスモデルの刷新が起こることを頭の片隅に置きながら、AIと向き合っていく必要があると思います」(生田氏)

EC事業者がAI導入を考えるべきタイミングは?

 ECに関する生成AIの活用の現状、そして考えられる未来はここまでの話で理解できた。では、どのタイミングで取り組みを始めればよいのだろうか。

 この疑問に対して生田氏は「今からできる範囲で取り組んだほうがいい」という。

 「中には『顧客体験へのAI活用はまだまだ先の話だろう』『ある程度整備されてから後で乗っかればいいのではないか』と思う方もいるかもしれません。でも、それでは手遅れになります」(生田氏)

 歴史を振り返っても、スマートフォンの台頭にうまく乗り切れなかった大企業が新興に後塵を拝したケースは数多くある。生田氏は「AIの活用に関しても、時代に置いていかれないために第1段階からなるべく早く対応する必要があるでしょう」と語った。

 もちろん第2段階であるインターフェースの刷新は容易な作業ではなく、答えがあるわけでもない。ただ、第1段階でAIに慣れ親しんでいくことで、自分たちのビジネスにどう活用できるかが少しずつ見えてくるという。そうすることで次の2段階にスムーズに移行でき、先行者利益が獲得できるのだ。

ECビジネスのAI活用はCRM領域からがおすすめ

 なるべく早めに取り掛かるとして、実際ECにAIを活用する際どこから取り掛かればよいだろうか。生田氏によると「すでにファーストパーティーデータが多くあり、複雑なコミュニケーションが要求されるCRM領域がおすすめ」だという。

 具体的には、ユーザーとタイミング、コンテンツの3要素においてそれぞれAI活用の余地があるという。CRMで大切とされる「最適なユーザー」×「最適なタイミング」×「最適なコンテンツ」の最適解をAIが導いてくれるのだ。

 まず「最適なユーザー」は、AIで購入記録や消費者の習慣、嗜好、行動を分析し、今後最も購入する可能性の高い顧客を予測。予測したデータをもとにターゲティングをすることで、オファーが響きやすいユーザーを見つけていくことができる。

 「最適なタイミング」に関しては、各顧客の過去の受信チャネルと受信時刻を照合し、最適な配信チャネルと配信時刻をAIで予測できる。たとえば、「Aさんは15時台にメールを開く傾向がある」「BさんにLINEを送るなら朝9時がよい」といったことが見えてくるはずだ。

 「最適なコンテンツ」は、顧客1人1人の過去の行動データをもとに趣味嗜好を分析した上で商品をレコメンドするなど、メルマガやLINEなどのメッセージの配信時にパーソナライズしたコミュニケーションを行えば実現できる。また、AIを活用すればテキストや画像クリエイティブの自動生成が可能になる。版権フリーのものを使えば、メールやLINEにそのまま使えるため、コンテンツ作成の工数や費用を大幅に削減できるだろう。

 「これらユーザー×タイミング×コンテンツの3要素でAIを活用すれば、今から始める人でも第1段階にしっかり乗ることが可能です。そうすればスムーズに第2段階のPDCAを回していけると思います」(生田氏)

AI活用でメール開封率が1.58倍に!

 続いて生田氏はECのAI活用をよりイメージしやすくするために、ビービットが支援した婦人靴ブランドによるAI活用事例を紹介した。

 AIを活用する前、その婦人靴ブランドではメールの開封率が低いという課題を抱えていた。毎月100万通以上のメールを送信していたものの開封率が低く、自社での最適化に限界を感じていたという。

 その課題解決策として採用したのが、ビービットの提供するCRMツール「OmniSegment(オムニセグメント)」のAIスマート配信機能だ。「何時に送るとメールの開封率が高まるか」を機械学習で導き出し、配信時間の最適化を行った。

 通常の配信方法とA/Bテストを行ったところ、AIスマート配信機能を使った場合の開封率はなんと1.58倍になったという。しかもコンバージョン率(CVR)は維持できていた。

 「この事例で行った作業は決して難しいことではありません。このことからも、AIをEC運用に取り入れるだけで成果向上を簡単に実現できることがわかると思います。このようにできる範囲でAI活用に取り組んでいくことをおすすめします」(生田氏)

AI搭載型のCRMツール「OmniSegment」の強み

 今回婦人靴ブランドが導入した「OmniSegment」は、高度なセグメンテーションと精度の高い顧客コミュニケーションを実現する、CDP・BI・MA一体型グロースマーケティングツールだ。最新のAIを搭載しており、商品レコメンドやユーザーターゲティング、時間帯配信テキストや画像の生成までフルセットで行うことができるという。

 OmniSegmentの特長は小売とEC特化のソリューションである点だ。OmniSegmentは小売/EC事業者の業務を研究し尽くしており、日々の業務に忙しい小売/EC企業の担当者でも簡単に使えるようにUIを作り込んでいる。

 また、ユーザーの商品の閲覧・購入状況をもとに属性データを付与し、趣味や嗜好を判断することも可能だ。得られた趣味・嗜好はセグメント配信の条件にも活用できる。

 そして、コンサルタントが併走するサポートの手厚さも特長的といえる。ツールの設定や更新だけでなく、データ分析や施策設計・実行、さらにアドバンスド支援ではMAだけに留まらないEC売上向上に関わるマーケティング施策の立案や実行まで支援していくという。

 このようにOmniSegmentのようなツールを活用すればAI導入のハードルも低くすることができ、ECビジネスの大きな売上拡大を現実的なものにしていけるだろう。

 最後に生田氏は「今日お伝えした内容が、ECビジネスのAI活用のヒントになれば幸いです」とセッションをまとめた。

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社ビービット

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/11/17 10:30 https://markezine.jp/article/detail/43812