「【推しの子】」とのタイアップ施策で、広告感の少ない価値訴求に成功!
タイアップ施策においては、当時「マーケティング施策として有用性があるかわからない」「どのIP(知的財産)とどのようにタイアップすれば効果最大化につながるのかわからない」という課題があった。その解決に向け、ホットペッパービューティーでは数年かけて次のような検証を行っている。
「まず特定のターゲットセグメントに手法自体の有用性を検証したところ、ブランドリフトに対する費用対効果がとても良いという結果が得られました。次に、他のターゲットにも同様の効果があるのか、汎用性を検証しました。たとえば社会人女性のセグメントではマンガとのタイアップ、社会人男性のセグメントではお笑いとのタイアップを試みました。結果、どちらの施策もブランドリフトへの投資効率は非常に良く、汎用性があることが証明されました」(会津氏)

これらの成功を踏まえて、現在は勝ちパターンの解像度を上げることに取り組んでいるという。解像度の上げ方には、マンガ・アニメ・お笑いなどターゲット別に勝ちジャンルを特定する「広さ」の観点と、単なるタイアップではないIPとの協働コンテンツ型広告を展開する「深さ」の観点の2種類がある。
「深さ」を象徴するクリエイティブとして、会津氏はアニメ「【推しの子】」とのタイアップ施策を紹介。同施策では、ユーザー参加型キャンペーンと連動したオリジナルコンテンツを制作し、広告配信を行った。
「『キャラクターにCM案件のオーディションが来たため髪型を変える』というストーリーのもと、ホットペッパービューティーと連携を図る設計です。X(旧Twitter)でのユーザー投票も行われ、原作ファンが楽しめる内容かつ広告感が少ない形で、ホットペッパービューティーの価値の訴求に成功しました」(会津氏)
事業KPIへの貢献にこだわる、3つの効果検証
ホットペッパービューティーではブランドKPI指標の向上だけでなく、ブランド施策により事業KPIの向上にどれだけ寄与したかを統計的に特定している。またブランドKPIを最大化させるために、どんな施策KPIを設定すればいいのかという点も、統計的かつ定量的に分析して決定している。

その上で、会津氏は振り返りや効果測定についても説明。各レイヤーに応じて「アンケート調査」「Geo-experiment×統計モデル」「マーケティング・ミックス・モデリング(下記画像ではMMMと表記)」の3つの手法で振り返り、精度を高めるアプローチを取っていると述べた。

アンケート調査
アンケート調査では、相対的に蓋然性の高い手段で広告による各種ブランド指標リフトを測定。具体的には、広告接触者・非接触者の広告放映前後のブランド使用のデータを取り、差分の差分からリフトを測定している(統計手法「差分の差分法」)。さらにクリエイティブ指標に寄与している構成要素も定量的に特定し、次の制作に活用できるようにしている。
Geo-experiment×統計モデル
Geo-experiment×統計モデルとは、広告の配信エリア・非配信エリアに分け、広告を流したエリアで仮に流さなかった場合の結果を広告の放映後の実績から推定。実績との差分を効果とみなす考え方だ。このモデルを使ってCMや広告で、どれぐらいアドオンCV効果が生まれたのかが証明できる。
マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)
マーケティング・ミックス・モデリングとは、事業KPIに影響ある要素を投入して統計解析をし、事業KPIに対して各施策の貢献度を算出する方法だ。これにより複数の施策の結果やどの施策がどう良かったのか、全体最適されているかなどを可視化できる。
最後に会津氏は、「ブランドマーケティングでは得られた成果が継続的に再現可能な状態を作ることが重要であり、現状維持ではなくさらなる成果を求め進化していくことが大切です。そのためにデータドリブンな戦略設計や、クリエイティブ領域にもデータや論理を活用したPDCAを回していく必要があります」と語り、「ブランド指標の改善ももちろん重要ですが、事業成長や事業KPIへの寄与度、投資対効果について解像度高く説明できることも大事です。それが挑戦のためのさらなる投資獲得に近づくことになり、こだわりを持って行っています」として講演を締めくくった。
