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小さな会社、大きな仕掛け

役職も会議も評価制度もない 独自のティール組織を開発したHOLISに死角はないのか?

死角があるはず……打ち返された一問一答

 従業員一人ひとりが企業経営を“自分ごと化”することによって利益を伸ばす──まさに理想的な組織の在り方と言える。組織の課題は大抵の場合、メンバーの自分ごと化で解決すると言っても過言ではないだろう。HOLISグループでは上司がしつこく促さずとも、従業員が自ら学び続けている。なぜなら、そのふるまいによってもたらされるインセンティブがあるからだ。

 HOLIS式ティール組織の新しさに理解が追いつかず、死角の有無が気になった私は片桐さんにあらゆる角度から質問を投げかけた。その一部を紹介する。

Q:お金のやりくりが難しくなった場合はどうするのか?

A:主に店舗型ビジネスを展開しているため、コロナ禍の経営はたいへん厳しかったです。厳密なルールに則ってお金が管理されている都合上、他の事業部から借りることもできません。ですから、暇になった店舗のメンバーは忙しい他部署へアルバイトに出向いたり、副業をしたり、助成金を申請したりするなど、あの手この手を尽くしてどうにか乗り越えていました。もちろん私から助言はしましたが、最終的にアクションを決めたのは各メンバーです。

Q:この仕組みはどんな事業でも導入可能か?

A:理論上はどの事業でも導入可能だと思っています。ただ、当社がトライしたことのない事業体で「導入可能」と言い切るのは私の性格上難しいです。当社ではHOLIS式ティール経営の導入を支援するサービスを立ち上げ、M&Aも行いながら計10社ほどのクライアントに提供しています。クライアントの事業は美容室経営や建設など様々です。今のところすべてのクライアントでうまく機能していますね。

Q:最大の死角は“継承”ではないか?

A:おっしゃるとおりで、継承こそが最大のボトルネックになると理解しています。私がいなくなった後でも、意思を引き継いでくれる経営者にバトンタッチしなければなりません。そのためにHOLIS式ティール経営に賛同してくれるグループ企業を増やしているわけです。

 片桐さんに何度も質問をぶつけたものの、すべての質問を瞬時に打ち返されてしまった。感服である。

資本主義の不完全性を補う新しいアプリケーション!?

 「人はインセンティブがあるほうに流れる」というのは私の持論だ。HOLISグループでは人を管理することなく、お金の流れを管理している。まだ確信は持てていないが、お金の流れの管理こそが組織運営の新たな鍵になるかもしれない──そう思えた取材だった。

 私にとって今回の取材は、組織というものを改めて考え直すパラダイムシフトのような機会となった。取材中、私を含めたインタビュークルーは終始放心状態で、片桐さんから話を聞いてもにわかには信じられず「この規模で、この仕組みでなぜ回るのか?」がどうしても掴みきれなかったようだ。

 HOLIS式ティール組織を説明する際に、資本主義経済を前提にすると説明が難しくなってしまう。ところが話をよく聞くと、資本主義経済のルール下でシステムが見事に設計されているのだ。穴という穴がほとんど塞がれ、完璧に近い形で実装されている印象を受けた。驚くほどにバグが見当たらない。こんな取材は初めてである。

 資本主義を不完全なOSだとすると、その不完全さを補うニュータイプのアプリケーションがHOLIS式ティール組織であり、これら二つを組み合わせることによって、次世代の組織運営を実現できるのかもしれない──そんなことを思わずにはいられなかった。

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この記事の著者

阿部 圭司(アベ ケイジ)

アナグラム株式会社 代表取締役/フィードフォースグループ株式会社 取締役。大手アパレルメーカーを経て運用型広告の世界へ。リスティング広告やFacebook広告を筆頭とする運用型広告の領域が得意なマーケティング支援会社アナグラムを創業。その後、フィードフォースグループにグループジョイン後、現役職。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/05/29 12:14 https://markezine.jp/article/detail/44223

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