Teslaに風穴をあけるComma.ai
さらにこのTeslaの革命に並走して、天才ハッカーが起業した「Comma.ai」社の自動運転のデバイス「comma3X」を紹介しよう。スマホサイズにも関わらず、近年の新車なら装着するだけで自動運転機能(open pilot)を持たせることができるデバイスだ(画像1)。
車オーナーは、購入したcomma3Xを自分の車のフロントガラスに取り付け、新車には標準装備されている特定のプラグにワイヤーを差し込むだけで利用できる。初期費用は1,250ドルから(2023年10月時点)。
Teslaとの違いは、ハッカー起業らしい、オープンソースで進化を遂げようとしていること(ゆえに利用料が手軽)。Teslaとの共通点としてcomma3Xも「目(高解像度カメラ)」を用いており、しかも「Tesla級かそれ以上のドライビング環境を提供してくれるのにTeslaより格安」と認知度を上げている。
本稿で強調したいのは、これらの新デバイスや新アプリを載せる「強靭なインフラ(OS)」の必要性だ。というのも、comma3Xが新手のハッカーから侵略の標的になることもありえる。ChatGPTで話題にされる脆弱性と同様に、起こりえるハッキングや事故を防御する強靭なOSが整えられて初めて新機能を安心して使うことができる。Teslaをはじめ大資本側は、新機能の提供よりむしろ「強靭なインフラ」側に先行して厚く出資している。
「(カメラの)目」のデータが、「AI」「超高速」「巨大な即時データ」によって、新しい「1人称(ワタシ)のコンテンツ」へと進化する。目に見えているサービスの土台として、新ウォールド・ガーデンの強靭なOSインフラが構築されていく。クルマというデバイスに「アドオン」でサブスク化できるサービス競争の背後には、強大な安全投資競争が着々と進んでいるはずだ。
