商圏内での競争は激化傾向
コロナ禍以降の生活者による買い物行動の変化は、小売店舗の競争にどのような変化をもたらしたのでしょうか?
図表4は、生活者が自宅から3km未満の店舗(スーパー・コンビニ・ドラッグストア)を月に平均何店利用しているか、その推移を表しています。

コロナ禍前は月に平均4.1店だった利用店舗数は、コロナ禍以降増加し、2021年には4.8店まで増えました。しかし、その後増加することはなく、2023年には4.6店に減少しています。業界団体などが発表している2023年上期の店舗数を見ると、コンビニは店舗数が微減しているものの、スーパー・ドラッグストアは店舗を増やしており、全体として小売の店舗数は大きく変わっていないようです。そのような中で、生活者が利用する店舗数が減少している状況を考えると、2023年は商圏内の競争が激しくなっていると考えられます。
月平均4.6店という利用店舗数を業態別に見ると、スーパーとコンビニは平均2店弱、ドラッグストアが平均1店強となります。そのため地域で定着する店舗になるためには、スーパーやコンビニは、地域で上位2店舗以内に入ること、ドラッグストアであれば地域で1番の店舗を目指すことが必要なのかもしれません。
生活者の変化を捉えて選ばれるお店作りを
図表5は、自宅からの距離別構成比の変化をスーパーのチェーン別に計算し、その内、4つのチェーン3km未満のデータのみ抜粋して表示したものです。

自宅から3km未満の店舗において、Aチェーンは、コロナ禍が本格化した2020年から毎年シェアを伸ばし続けています。一方、Bチェーンは、2021年まではシェアを伸ばしましたが、その後の2年間においては縮小傾向に転じました。2021年まではいわゆるコロナ特需の恩恵を受けていたものの、その後の変化にはうまく対応できていない様子が伺えます。Dチェーンは、コロナ禍以降、毎年シェアを落としており、2023年はより縮小傾向が強くなりました。
つまり、業態ごとにコロナ禍以降の客数シェア変化が一様ではなかったのと同様に、自宅近くのスーパーであっても、チェーンごとに明暗があるということがわかります。また、客数のシェアを伸ばしているチェーンの特徴を見ると、そのほとんどがEDLP(Everyday Low Price)や惣菜を売りにしているチェーンであり、まさに生活者のタイパ・コスパ意識の高まりに適したしたお店作りを実現しているチェーンと言えるでしょう。
小売業界を取り巻く生活者の意識や買い物行動の変化は止まることはありません。小売企業もそれに対応すべく、運営方法の見直しやDXの推進、AIの活用など様々な面で変化をしています。売り手、買い手ともに大きく変化する時代の中で小売企業が勝ち残っていくには、業態を超えた商圏内における生活者の買い物行動全体の変化をタイムリーに観測し、その背景にある意識の変化を捉えて、お客様に選ばれるお店作りを目指すことが重要になりそうです。