Cookie規制により、デジマにおける取り組みの見直しが必要な状況に
まず山崎氏は、これまでリターゲティング広告に頼ったプロモーションを行ってきた企業が、Cookie規制の波を受けて変化を強いられている現状を説明した。これはECやリテールに限らない、マーケティング全体の実情だ。
リターゲティング広告はリターゲティングなしと比べて「コンバージョンに至る可能性が499%高い」「クリックごとのコストが8分の1になる」などのメリットがあることがデータからも明らかになっており、Cookie規制によってこうしたメリットを享受できなくなることは、多くの企業に影響を及ぼすであろう。
また、リターゲティングができなくなると広告コストが37%増加するというデータもあり、山崎氏は「デジタルマーケティングにおける取り組みを大幅に見直さなければいけない状況に直面している」という。
リテールメディアの台頭とその背景
デジタルマーケティングを見直すにあたり、新たな投資先には様々な選択肢があるが、その一つがリテールメディアだと山崎氏はいう。ただし、リテールメディアがリターゲティング広告の完全な代替手段になるとは限らないため注意が必要である。
そもそも、従来のマスマーケティングは「ターゲットをセグメントせず多くのユーザーに向けたアプローチをかけるため、ユーザー離脱は多いもののいかにサイト流入を増やすか」を重視する手法だった。この傾向が昨今変化しており、ユーザー集客の時点でターゲットを絞り、リーチしたユーザーの離脱を防ぎコンバージョンまで結びつけるというアプローチになっている。サイトを訪れた貴重なユーザーに、いかに納得の行く形で購買までたどり着いてもらうかが重要視されるのだ。
その点、リテールメディアは関連性の高い広告を配信するため、ユーザーは複数社の商品を公平に見比べることでより納得感の高い買い物ができる。山崎氏はリテールメディアの強みを「大きなショッピングモールに行くような楽しさがある」と表現した。このようにリテールメディアは企業側のメリットだけではなくユーザーにとってのメリットも大きいため、近年はCX向上の観点としてもリテールメディアに注目が集まる潮流が生まれている。
ユーザーに信頼されるカギとなるのは?
そうした流れの中でUGC、つまりユーザーの作るソーシャルコンテンツがカギになると山崎氏は話す。UGCによってリテールメディアが盛り上がれば、ユーザーは購買だけでなくサイト訪問自体も目的となっていく。
たとえばAmazonで買い物をする時、必要なものを検索して求めている商品を一直線で購入するだけでなく、なんとなくサイトを閲覧し新しいキャンペーンに気づいて購入するといった、“セレンディピティ(偶然の出会い)”が生まれる。
「これまでのECサイトは商品を買うための場所でした。ソーシャルメディアや口コミサイトで商品を吟味した後の購入プロセスをECサイトが担うことが多かったのですが、現在はECサイト自体がコンテンツを豊富に抱えユーザーを集客する場所になってきています」(山崎氏)
またUGCの重要性が高まっている背景には、ユーザーの広告への忌避感もある。調査によれば、企業の広告と比べカスタマーが発信する情報は6倍も信頼されている。リテラシーの高いユーザーが増えた今、「企業にとって都合の良い内容を発信しているのではないか」という意識があるため、レビューやQ&AといったUGCの存在が信頼につながるのである。
口コミはブランドECとリテールECのどちらにも役立つコンテンツだが、特にリテールECでは複数社の商品を横並びで検討するため、他のユーザーの口コミを参照しながら買い物ができCXを高める要素となる。
「レビュー機能を加えることで悪口や耳の痛い意見が来てしまうのではないかと敬遠するのではなく、次世代でより良い商品を開発するための情報源として、UGCを前向きに捉えていくべきではないか」と、山崎氏は強調した。
ECにおける新たなUGC活用「キュレーション」
さらにECにおいて口コミやQ&AといったUCGは、SEO改善にも活用が期待できる。実際、米国Amazonへの流入の約75%は、GoogleにインデックスされているAmazonのレビューページ経由だという。検索エンジンのロジックはGoogleが日々アップデートしているが、基本的には本質的で中身のあるコンテンツが上位に来るように調整されている。そのため、オーガニックなユーザーの口コミはSEOの視点でも価値が高くなるのだ。
昨今のECサイトは、一つの商品に対してコストパフォーマンスや品質をはじめとした“複数の側面”から評価したレビューを書きこむことができ、レビューを投稿したレビュアーの年代・性別などの属性も参照できる。そのため、口コミやレビュー、Q&AといったUGCが貴重なデータとなるのだ。
また今後は、ユーザーがブランドを横断した商品の組み合わせを提案する「キュレーション」も、有意義なUGCとして期待されている。ZETAは2023年8月から、ECキュレーションエンジン「ZETA BASKET」の提供を開始した。
「アパレルのブランドや店舗スタッフが、お勧めの商品を組み合わせてコーディネートを提案しますよね。ZETA BASKETでは、ユーザーが『A社のこのアイテムとB社のこのアイテムを組み合わせたら非常に良かった』という消費者視点で商品の組み合わせを投稿できます」(山崎氏)
各社の強みを比較し組み合わせられるのがリテールメディアのメリットであり、こうしたキュレーション的コンテンツはより盛り上がりやすい。山崎氏は「リテールメディアでは、口コミやQ&Aに次ぐUGCとして盛り上がる可能性がある」と見据えている。
回遊ページ数やCVRなどに高い効果!ECサイトの取り組み3選
実際に効果の高いECサイトでは、どういった取り組みをしているのだろうか。山崎氏は3つの事例を紹介した。
CROOZ SHOPLISTが運営するファッション通販サイト「SHOPLIST」では、ZETAのリテールメディア広告エンジン「ZETA AD」を導入し、PR枠商品の露出箇所の自由度を高く設定。検索連動型広告で、広告とコマースの融合を実現している。
またユナイテッドアローズの公式通販サイト「UNITED ARROWS ONLINE」では、ハッシュタグ活用エンジン「ZETA HASHTAG」を導入している。同ソリューションは、自動生成されたハッシュタグをサイト内に表示するものだ。
ハッシュタグを経由して検索したユーザーは、ハッシュタグを経由していないユーザーと比べ直帰率が3分の1に減少。回遊ページ数が約2倍、滞在時間は1.8倍アップし、コンバージョンも2倍以上と大幅に向上している。山崎氏は「ハッシュタグをたどることで、違う商品へと能動的に渡り歩きやすい」とメリットを示した。
同じくZETA HASHTAGを導入しているバロックジャパンリミテッドの公式通販サイト「SHEL'TTER WEBSTORE」でも、直帰率は4分の1以下に減少。回遊ページ数は約4.5倍、滞在時間は4.9倍、コンバージョンもおよそ3.7倍と、高い効果が出ている。
ECサイトを改善する8つのソリューションを提供
Cookie規制を目前に、リテールECのデジタルマーケティングはどこに向かうべきなのか。「最も有望な手段の一つが、リテールメディアではないか」と山崎氏は語る。リテールメディアではユーザーのCX向上が実現できる点、リテールメディア側にも広告収益が入る点など様々なメリットが期待できる。そして、リテールメディアを盛り上げるために欠かせないのはUGCの活用である。レビューやQ&A、キュレーションといったUGCが有効であるのは前述の通りだ。
ZETAの製品にはリテールメディアを活性化・支援するための機能が詰まっており、事例として紹介したようなアパレル企業をはじめ、ニトリや資生堂ジャパン、ミドリ安全といった幅広い業種に採用されている。
最後に山崎氏は、ZETAが提供する製品の概要を解説した。同社の一番の強みであるEC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」をはじめ、レビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」やOMO・DXソリューション「ZETA CLICK」、レコメンドエンジン「ZETA RECOMMEND」など、新製品のECキュレーションエンジン「ZETA BASKET」を合わせると同社は8つのソリューションを展開している。
「個別のケースに沿った形での説明もできるので、興味を持った方はぜひお問い合わせいただければと思います」と述べ、山崎氏は講演を締めくくった。
リテールメディア、サイト内広告に興味のある方におすすめ!
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