なぜ「俯瞰(メタ)的に見る」ことに価値が生まれているのか?
MarkeZine編集部:DDDでは「メタというカタルシス」の欲望トレンドが生まれている背景を、どのように推察していますか?
佐藤:“多様性”と“自由”の幅が広くなっている現代、「これだ」という一つの正解を示すのが難しくなっているのと同時に“不確実性”も高まっています。映画業界などエンタメの領域においても、商品や広告を企画するビジネス領域においても、そして各々自分の人生においても共通している課題です。
現に「ネガティブケイパビリティ」という言葉がバズワード化していますが、これは要するに「性急に答えを出さずに不確実な状態に耐える」ためのスキルですよね。ビジネス界隈でこのワードが話題になるということは、やはり“不確実性”を自分事として実感している人が多いということでしょう。
そんな中、とりあえず色々な情報を自分の中に摂取することは、安心感=カタルシスをもたらしてくれる。だから、「メタというカタルシス」という欲望が生まれているのではないか、と我々は読み解いています。
何でも「推す」のが現代の消費者⁈
MarkeZine編集部:4つ目は「推し活経済圏の拡張」ですね。“推し活”はこの数年ずっと注目されていますが、これが拡張しているのでしょうか?
【欲望トレンド4】推し活経済圏の拡張:従来の推し活が広がり、本来“推し”の対象ではないものにまで推し活が広がりつつある。
佐藤:そうなんです。先に前提として、「好き」と「推し」の違いについてお話ししておこうと思います。まず「好き」というのは、たとえば声優なら、本業である声優としての活動に興味関心がある状態と僕は定義しています。一方「推し」は、声優としての活動はもちろんのこと、その声優が関係する物事すべてを余すことなく享受したいと思える対象のことであり、そのために時間もお金も惜しみなく投下して“推しを享受する活動”が「推し活」です。
トレンド事例9:見立て消費
佐藤:そんな推し活が拡張される形で起きているのが「見立て消費」の現象です。推しのアイドルのメンバーカラーである商品を買うといった消費行動を見聞きしたことはありませんか? 液状のりの『アラビックヤマト』は、この流れをうまく活かしており、限定発売のクリアカラーのタイプは大きな反響があったようです。ちなみに、最近は推しのイメージでブレンドしたシーシャ、通称「推しシーシャ」なるものも人気が出始めているんですよ。

MarkeZine編集部:推しシーシャ、ですか。すごい世界ですね……!
トレンド事例10:勝手に推し活
佐藤:そして面白いのは、本来推しの対象ではないものを勝手に推し扱いするような新しい動きが見られるということです。
たとえば「作り手の見える〇〇」というキャッチコピーで販売されている卵や野菜がありますよね。これは本来、消費者に安心安全であることを感じてもらうために載せているのだと思いますが、パッケージに載っている農家さんを勝手に推したり。パッケージに載っている農家さんがかっこいいという理由で購入したり。自分だけの推しの対象を探している消費者が出てきているのです。
これは商品やサービスのベネフィットとして新しい価値になり得るのではと考えます。