ChatGPTをマーケティングに導入する方法8選
ChatGPTをマーケティングに活用する方法は、次の8通りだ。
- テキストコンテンツの制作
- ペルソナの調査
- データ分析
- キーワード選定
- キャッチコピー・タイトル作成
- SNSマーケティング
- 画像コンテンツの生成
- チャットボット
それぞれ順番に見ていこう。
テキストコンテンツの制作
ChatGPTは、Webメディアの記事コンテンツやメールマガジンの文章など、テキストコンテンツの生成が得意だ。プロンプトに、どのようなターゲットに対してどのような媒体にテキストを掲載するのか明確に伝えることで、文章の精度を高められる。
具体的には、次の項目をプロンプトに盛り込むことをおすすめする。
- 媒体
- ターゲット
- 記事コンテンツの目的
- おおよその文字数
- 文体
実際には、以下のようにプロンプト内に「##」で区切って上記項目を記載する。
「以下に示す条件に基づき記事コンテンツを作成してください。
##媒体
生成AIに関する情報発信を行うWebメディア
##ターゲット
生成AIをこれから使い始める人
##記事コンテンツの目的
ChatGPTに入力するプロンプトのコツを伝える」
これによって、項目追加も容易になる上、他の記事コンテンツを作成する際に応用が効く。
ペルソナの調査
ChatGPTはペルソナ調査時、詳細なペルソナ像を作り上げるのに大きく寄与する。たとえばWebメディアの記事コンテンツを作成する際に、キーワードから指定した人物像に関する項目を生成してもらえる。
プロンプトには「次のキーワードを検索エンジンで検索するユーザーのペルソナを考え、以下の項目を教えてください」とし、次の項目をプロンプトに盛り込む。
- 検索キーワード
- ペルソナ(年齢・性別・職業・趣味など)
- 検索意図
- 検索シチュエーション
ChatGPTは単純なペルソナ調査だけでなく、検索意図や検索シチュエーションまで具体的に設定可能だ。詳細なペルソナ像が必要な場合は、これらもプロンプトに盛り込むとよい。
データ分析
有料版のChatGPT Plus(GPT-4 All Tools)限定になるが、テキスト以外のドキュメントも読み取ってデータ分析が行える。
PDFやCSVファイルをアップロードしてプロンプトを入力すると、ChatGPTが内容の分析や要約をしてくれる。この機能を使って、顧客動向やクリック率などのデータをChatGPTで分析が可能だ。
プロンプトは分析したいファイルをアップロードして、「次のファイルを読み込み、ユーザーの反応が良いコンテンツの傾向を教えてください」など、分析してもらいたい内容を指示すればよい。
キーワード選定
Webメディアを運営している場合、作成する記事コンテンツのキーワード選定をChatGPTに任せられる。
プロンプトには「私が運営するマーケティングに関するWebメディアのSEOに有効な、記事コンテンツのキーワードを10個考えてください」と入力するだけで、すぐに10個のキーワード案が生成される。人間が行うより効率的に、対策キーワードの選定が可能である。
また、生成されたキーワードを基に、次に紹介するタイトル作成を行うと効果的だ。
キャッチコピー・タイトル作成
キャッチコピーや記事のタイトル作成もChatGPTで生成できる。
ChatGPTにイベントや商品の特徴など、必要な情報を入力すれば一度に多数の案が返ってくる。プロンプトには「以下に示す情報を基に、Webメディアに掲載するターゲットにとって魅力的な記事のタイトル案を10個考えてください」と入力し、以下の項目を盛り込む。
- メディアやイベントの情報
- ターゲット
- 文字数
- 含めたいキーワード
ChatGPTを活用することで、効率的にアイデア出しが可能だ。なお、生成されたキャッチコピーやタイトルに良いものがない場合は、「さらに10個の案を考えてください」と指示をすれば、追加の案を作ってもらえる。
SNSマーケティング
SNSマーケティングにもChatGPTは活用できる。フォロワーを増やすための投稿内容について、ChatGPTに相談すればアイデアがもらえる。
たとえばX(旧Twitter)では、ユーザーの管理画面から分析データのCSVファイルをダウンロードできる。このCSVファイルをChatGPTにアップロードし、「私のこれまでの投稿内容を基に、フォロワーを増やすために効果的な投稿文章を考えてください」と指示するだけでよい。
他のSNSにおいても自身の投稿しているジャンルや、内容の方向性、過去の投稿をプロンプトに盛り込み、同様の指示をすれば投稿案が得られる。
画像コンテンツの生成
こちらも現在は有料版のChatGPT Plus(GPT-4 All Tools)限定の機能になるが、画像コンテンツの生成もChatGPTでは可能だ。
ChatGPTで画像生成AIのDALL-E3を利用できるようになったため、簡単なプロンプトで高いクオリティの画像が生成される。たとえば「ロボットの画像を作成してください」とプロンプトを入力すると、背景などはChatGPTが考えて画像を生成してくれる。
また、生成した画像を「イラスト調に変換してください。」と指示すれば画像の修正も可能だ。AIで生成した画像コンテンツで、フリー素材より高い広告クリック率を獲得した事例もあるため、使いこなせば強力なマーケティングツールになるだろう。
チャットボット
ChatGPTを用いた自然言語に近い形式で応答するチャットボットを開発すれば、顧客のニーズ把握やユーザー層の分析に役立てられる。従来のチャットボットのような択一式のやり取りではなく、ChatGPTの文脈をくみ取る能力を活かした対話形式でやり取りを行い、正確にユーザー層やニーズの把握が可能だ。
また、ChatGPTに一般的な問い合わせ対応を任せられれば、社員は優先すべき重要な業務に集中できる。チャットボットの開発はAPI連携など一つレベルの高い活用方法だが、導入できれば大きな業務改善効果を生み出す。
ChatGPTをマーケティングに活用する際のプロンプトのコツ
次に、ChatGPTをマーケティングに活用する際に回答の精度を上げるための、プロンプトのコツを6つ紹介する。前章で解説した活用方法にも、以下のプロンプトのコツを取り入れればより意図に沿った回答が生成されるので、一つずつ試してみてほしい。
ChatGPTの役割を指定する
プロンプトの冒頭でChatGPTに役割を与えると、回答の方向性を示せるため精度が高められる。たとえば、テキストコンテンツを作成してもらう際に「あなたはプロのWebライターです」と指定したり、ペルソナ調査をする際に「あなたはプロのWebマーケターです」と役割を与えたりする。
求める回答に近い役割を指定すれば、その分欲しい回答を生成できる可能性が高くなるため、ChatGPTに様々な役割を与えて指示をしてみてほしい。
指示は具体的に出す
プロンプトを具体的に入力すれば、その分ChatGPTから得られる回答の精度も上がる。たとえば、「マーケティングに関するテキストコンテンツを作成してください」よりも、「マーケティング初心者に向けたテキストコンテンツを以下に示すタイトルで作成して下さい。テキストは500文字以内で『ですます調』にて作成すること」と具体的に条件を提供するほうが、思った通りの文章が生成される。
ChatGPTに具体的な指示を出すためには、プロンプトを作る前にどのような回答が欲しいのか言語化しておくのがおすすめだ。
複雑なタスクは分割して与える
ChatGPTは一度の回答で複数のタスクを処理させようとすると、誤った回答を生成しやすい。そのため、複雑なタスクを処理させる場合は一つずつ分割して、一つ前の回答を次の指示の土台として段階的に処理させるのがよい。
たとえばWebメディアの記事タイトルを作ってもらう時に、キーワード選定とタイトル案作成を一度に指示せずに、キーワード選定をしてもらってから「先ほど選定したキーワードを用いてタイトル案を作成してください」と指示すると、良い回答が得られる。
一度で満点の回答を得ようとしない
ChatGPTから一度で回答を得ようとせずに、対話をする中で意図する回答を作っていく姿勢も大切だ。ChatGPTから生成された内容が意図からずれていたとしても、「もっとターゲットの属性を踏まえた回答に修正してください」や「今生成したタイトルをブラッシュアップしてください」などの指示を与えれば、精度は高められる。
最初に出てきた回答が想定していたものでなくても、そこで諦めずにChatGPTと対話を続けてみてほしい。
ChatGPTに必要な情報がないか質問させる
ChatGPTから欲しい回答が得られない時は、必要な情報がないか聞いてみるのも有効な手だ。
プロンプトに含まれている情報だけでは、十分な回答が生成できない場合もある。「回答を生成する上で必要な情報がある場合は、私に質問をしてください」とプロンプトに含めておけばChatGPTから質問が返ってくるので、次のプロンプトで答えを入力すると回答の精度が上がっていく。
また、次回同様の質問をする際に必要な情報が理解できるため、回答生成の効率化にもなるだろう。
メタ認知プロンプティングを行う
少しレベルの高い手法だが、ChatGPT自身にプロンプトの内容や自身の回答を内省させ、回答の精度を高める「メタ認知プロンプティング」も精度を高めるのにおすすめだ。
メタ認知プロンプティングについては、2023年に海外の論文で発表された大規模言語モデル(LLM)の回答精度を高めるとされる手法である。プロンプトの末尾に以下の文言を加えれば、メタ認知プロンプティングが可能になるので、試してみてほしい。
「回答は以下の順序で行うこと。
- 私の質問の内容を理解し、要約してください。
- 質問に対する回答案を作成してください。
- 作成した回答案の内容を自分で批判的に評価してください。
- 評価を踏まえて再度回答を作成してください。回答内容の理由と回答の信頼度も教えてください」
ChatGPTをマーケティングに活用する企業の事例
ここからは、ChatGPTをマーケティングに活用している国内企業の事例を2つ紹介する。ChatGPTを業務にどのように活用してよいか悩んでいる方は、参考にしてもらいたい。
事業分析に利用(アナグラム株式会社)
広告運用会社のアナグラム株式会社では、フレームワークを用いた事業分析やクリエイティブ作成時のブレインストーミングにChatGPTを活用している。
「3C分析」や「SWOT分析」など考え方の前提条件を提供して、事業分析における回答の精度を高めた。ブレインストーミングにおいては、テーマに関連する単語とテーマとの関連度合いを100個生成させて、良いアイデアがあれば採用する手法を取っている。
同社では、自分が思いつかないアイデアを得られるツールとして、ChatGPTが用いられている。
コンテンツ制作の効率化(株式会社コムニコ)
SNSマーケティングを支援する株式会社コムニコでは、SNSに投稿するコンテンツ制作にChatGPTを活用している。ChatGPTで必要な情報収集やたたき台となる画像、文章生成を行い、生産性とクオリティの向上を目指している。また、ChatGPTを効果的に活用するために推進チームの設立や、社内マニュアルの作成や従業員へのレクチャー、相談窓口の設置も行った。
今後もAI技術を取り入れながら、AI活用ノウハウの提供サービスへの事業拡大も見据えている。
業務における「ChatGPT」活用の導入を行い、生産性と創造性の向上を図ります ~社内導入をスムーズに行うための、活用推進チームを新設~
ChatGPTをマーケティングに活用する際の注意点
最後に、ChatGPTをマーケティング業務活用する際の注意点についても解説する。生成AIは非常に便利なツールだが、気を付けなければならないポイントもあるので、しっかり理解しておくべきだ。
機密情報が学習に利用される可能性がある
OpenAI社から、ChatGPTに入力された情報はAI学習に利用する可能性があるとされている。そのため、社内の重要なデータや、顧客に関する情報は指示内容に含めない方がよい。または、入力した情報が学習に利用されないオプトアウト機能を利用するか、法人向けのChatGPT Enterpriseを導入する必要がある。
オプトアウト機能はChatGPTのメニュー画面から簡単に利用できるが、チャット履歴が残らなくなってしまうため注意しなければならない。
生成内容のファクトチェックが必要
ChatGPTはハルシネーション(幻覚)と呼ばれる、誤った回答を生成する場合がある。このため、生成された内容を鵜吞みにせず、人間がファクトチェックする体制が必要だ。
現在有料版のChatGPT PlusではWeb Browsing機能が搭載され、必要に応じてWeb検索を行って回答を生成するため、回答精度は向上した。しかし、ChatGPTが誤った解釈をしている可能性や、参照元となったサイトの情報が間違っている可能性もあるため、情報の精査は不可欠だ。
まとめ
今回はChatGPTをマーケティングに活用する方法とプロンプト作成のコツを解説した。ChatGPTはブロンプト次第でマーケティング業務を効率化できるツールにもなる。今回紹介したコツを用いて、自分なりのChatGPTの使い方を磨いていってもらいたい。
また、ChatGPT Plus に入ればGPT-4 (All Tools)が利用でき、画像生成やファイル読み込みも可能になる。活用の幅がさらに広がるため、ChatGPTの扱いに慣れてきたらGPT-4の活用も検討してみてほしい。