AIもリテールメディアもオムニチャネルの一環
――御社が昨年発表されたDX Map Commerceでも「買い物変化に合わせた、顧客接点の改修」が論点でした。これは、コロナ禍前後で増やした顧客接点を統合・改修して顧客体験の中に溶け込むようにチューニングしていくことを目指すという内容だったかと思います。そこに取り組んでいる段階の日本ではAIの活用も考慮する必要があるということでしょうか?

徳久:米国はオムニチャネル化がほぼ完了しています。リテールメディアはオムニチャネルの体験をアシストする一機能ですし、生成系AIも同様です。切れ目のない顧客の購買体験をいかに楽にするのか、店員の視点ならば効率的に対応するのかが論点になっています。
小田:ポイントだけ導入しても、コストが発生するだけで利益が上がってないからやめよう、と早計な判断につながってしまう可能性はあるかと思います。
――オムニチャネル化の完了と、米国で先行するAIやリテールメディアをどう取り入れていくのか、バランスをとりながら進める必要があるのですね。以上を踏まえて、日本のリテール業界に対し、御社ができることはどのようなことだとお考えですか?
徳久:大切なのは、生活者の変化に応じて、顧客体験の中にテクノロジーやリテールメディアを積極的に組み込んで、アップデートしていくことです。私達はデジタルとオフライン、トータルでの提案と支援が可能なので積極的に進めていきたいですね。
リテールメディアについては、今年1年が日本において勝負の年だと考えています。今年は利用される・利用されにくいリテールメディアの二極化が進むのではないかと思います。日本のリテールメディア市場を盛り上げていくためには、リテールメディアを継続的に使いたいというメーカーや具体事例が増えていくことが重要です。そのために、一般消費財ブランドと向き合っている我々はブランドの課題をリテールメディアのプランニングに落とし込んで成果につなげていくお手伝いができると考えています。
ダイバーシティ&インクルージョンの対応も進化
――ここまで、リテールメディアと生成系AIのお話をうかがいましたが、最後にNRF2014年に参加して個人的に感じた気付きや学びがあれば教えていただけますか。
小田:米国の小売企業は日本以上にカスタマーセントリックだと感じます。顧客が中心にあるからこそ、それをデジタルとリアルを横断して、より良いカスタマーエクスペリエンスを提供していくかという考えが根付いています。去年まではその拡大フェーズでしたが、今年は集約に移ってきたので、この流れが日本にどのように入ってくるか注視していく必要があると感じました。
小島:会場がNYだったことも関連するかもしれませんが、商品にしても売り方やメディアにしても、まずやってみようというトライの速さを実感しました。特に今回、実際の店舗を見た上でNRFに参加して取り組みの裏付けや狙いを学べたことが大きいです。実際に行って体験する大切さを再認識しました。今年は日本から参加された方も多いので、同様の手触り感を得た上で会話ができる機会が増えるのではないでしょうか。
徳久:個人的に感動した点では、ダイバーシティ&インクルージョンへの対応が非常に進んでいることです。ウォルマートの店舗視察に行ったところ、サイネージの映像も、店内音楽も、レジの機械音も全部消えたサイレントな時間帯がありました。これは、音や光に過敏な方が安心して買い物をするために設けられているそうです。また、NRFの展示でも目が見えない方が商品を見つけやすくするといったアシスト機能もありました。いろいろな人が買い物をする場という視点で、日本でもできることがまだまだありそうだと感じましたね。
――本日は様々なヒントをありがとうございました。
