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リテールのマーケティングトレンド

セブン-イレブン・ジャパンが見据える、リテールメディアの潮流~2023年の発見と2024年の展望~

2023年のリテールメディア業界を振り返る

MZ:2023年のリテールメディア業界全体における動向を、どのように見られていますか。

杉浦:2023年は、リテールメディアに取り組むプレーヤーの誰もが「新しいことをやろう」という意欲にあふれていましたね。一番驚いたのは、この一年で様々な広告代理店様やメーカー様の社内でリテールメディア事業部を新設する動きが出たこと。小売りだけでなく様々な立場からリテールメディアという言葉が掲げられたと感じます。

 また、リテールメディアのカテゴリーも増えました。私たちも、大きな広告宣伝費を持つ飲料メーカー様だけでなく、お菓子や雑貨、POSAカード(レジを通すと有効化するプリペイドカード)といったサービス系の企業様からも多く出稿をいただきました。他にも地方自治体など幅広い分野での事例が生まれ、他の企業様にとっても、より展開がしやすくなったと思います。

 私自身、セブン-イレブン・ジャパンのリテールメディアへの取り組みが認知されたことで、講演やメディア取材の機会が増えましたね。対談などで様々な立場の方と話していると、共通して「リテールメディアをバズワードで終わらせてはいけない」という思いを感じました。今後は業界全体で動く流れが生まれつつあります。そうした横のつながりが生まれたことは大きいですね。

リテールメディア業界が克服すべき課題は?

MZ:現状のリテールメディアの課題には、どのようなものがありますか。

杉浦:2023年1月にアメリカのNRF(全米小売業協会)に参加して驚いたのは、米国ではすでにリテールメディアが市民権を得ていることでした。日本ではまだまだ黎明期のフェーズですが、その要因の一つに業界としてリテールメディアの効果指標が整備できていないことが挙げられます。

 たとえばテレビCMにおける視聴率のように、各社横並びで成果をイメージできる指標がありません。各企業が取り組んではいるものの、メーカー様が出稿する際にまだまだ比較検討しづらいのが現状です。

 米国ではウォルマートが中心になって市場をつくり、法整備を進めています。今後、日本でメーカー様がリテールメディアをしっかりと使えるようにするためにも、今年はその部分を業界全体で整理しなければいけないと感じています。

杉浦:もう一つは、メーカー様が出稿する際の予算配分の難しさです。小売り相手の場合、メーカー様は営業の販促費用から広告出稿をすると、その分の販促費用を削らざるを得なくなる。とはいえ、宣伝部から予算をいただこうとすると、リテールメディアは広告範囲の狭さがネックになってしまいがちです。

 そこで当社では「お客様のLTVを高める」という切り口でアプローチすることにしました。たとえばお客様に商品を買わなかった理由を聞き出すのは、マーケティング領域の活動といえるでしょう。そこで「広告と購買の接点を通じて顧客を育てていきませんか?」という文脈で、マーケティング部の方にもご一緒いただけるよう働きかけています。

 日本のリテールメディア業界はこの先、メーカー様が新たなお客様作りを行う上でリテールメディアが発揮できる強みや独自性を証明しなければいけません。2023年はその元年であり、2024年は業界全体でそこを磨き上げる年にしたいですね。

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リテールメディア業界が注力すべきは“顧客体験価値”

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/02/27 09:00 https://markezine.jp/article/detail/44780

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