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リテールのマーケティングトレンド

セブン-イレブン・ジャパンが見据える、リテールメディアの潮流~2023年の発見と2024年の展望~

 近年、急速に注目を集める「リテールメディア」。米国では既に一大マーケットを築き上げているというが、日本の市場に根付き、発展を遂げるためには今何が必要なのか。本記事では、リテールメディア事業に2022年9月から本格参入したセブン-イレブン・ジャパンのリテールメディア推進部 杉浦氏にインタビュー。2023年を通して見えた潮流や同社の取り組みを振り返るとともに、2024年の展望について聞いた。

2023年、セブン-イレブン・ジャパンが得た気づき

MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、自己紹介をお願いいたします。

杉浦:セブン-イレブン・ジャパンに新卒で入社し、店舗勤務の後、フランチャイズ加盟店の経営カウンセラーや長野・山梨エリア、東京西部エリアでゾーンマネジャーという1,000店規模の店舗責任者などを経験しました。20年ほどを現場で過ごしたことで「顧客視点」と「加盟店視点」の両方が身に付いたと感じます。

 その後、セブン&アイ・ホールディングスでの新規事業立ち上げやDX業務を経て、2021年から「セブン-イレブンアプリ」の責任者となりました。そこでアプリ活用がtoCだけでなく広告主・メーカー様といったtoBにも提供できると考え、2022年9月にリテールメディア推進部を立ち上げました。

セブン-イレブン・ジャパン マーケティング本部 リテールメディア推進部 総括マネジャー 杉浦克樹氏
セブン-イレブン・ジャパン マーケティング本部 リテールメディア推進部 兼 デジタルサービス部 総括マネジャー
杉浦克樹氏

MZ:セブン-イレブン・ジャパンは2023年、リテールメディア事業へどのように取り組まれましたか。

杉浦:2023年はID‐POSデータ「7iD(セブンアイディー)」と、媒体としてのアプリ連動で走り切った一年でした。当社のリテールメディアにおける強みは、会員数が2,300万人を超えるアプリの規模感にあります。セブン-イレブンアプリが使用されるタイミングは購入直前が多いため、お客様の購買アシストにおいて一定の成果が出せたと感じています。

 リテールメディア事業がスタートした時点で私たちは、データがリテールメディアにおいてどれほど役立つかに対する理解が行き届いていませんでした。当時は会員数の多いアプリに広告配信することで、メーカー様から広告媒体/面としてとして支持いただきたいと思っていたのです。ところが蓋を開けてみれば「お客様の行動を検証できることにこそ、価値がある」と、取り組みを通してデータの重要性に気づかされた一年になりました。

 ID‐POSデータを使うことで、配信前のデータ分析からターゲティング、購買に至るまで継続的に追いかけることができます。一人ひとりのお客様と深く向き合える強みを全面に押し出せるようになったことが、2023年における私たちの収穫だったといえます。

「買わなかった理由」を深掘り

MZ:実際にデータをどのように活用したのでしょうか。

杉浦:データの重要性に気づいてから、新たな仕組み作りに着手しました。その一つが「買わなかった理由」を尋ねるアンケートです。メーカー様にお話を聞くと、実はメーカー様にとっては「買った理由」よりも「買わなかった理由」のほうがニーズがあるというのです。

 もちろん、「買わなかった理由」を購買の結果のみで分析することはできません。そこで、お客様にアプリのアンケート機能で「買わなかった理由」を選んでいただき、メーカー様にフィードバックするサービスを始めました。

 たとえば機能性飲料のようにターゲットが明確な商品の場合は、そもそもターゲット設定がお客様に適しているかや、競合ブランドと比べた際の認知度を把握する必要があります。そうしたデータを集めながら、クーポン配信などのトライアル施策へとつなげていきました。買って終わりではなくその前後のジャーニーや行動変容まで向き合っていくべきだと気づきましたし、2023年は改めてLTVの重要性を実感した年になりましたね。

MZ:リテールメディアに取り組む中で、より具体的な強みが見えてきたということですね。

杉浦:そもそも、小売業者がリテールメディアによって広告業を担う場合、広告配信の場の提供だけでは限界があります。なぜなら、広告主からは「店舗を訪れるお客様限定のメディア」として映るからです。

 そこで、私たちはリテールメディアを広告の「広さ」ではなく「深さ」を求めるビジネスへと方向転換させることにしました。一人ひとりの顧客の行動を突き詰めることで、行動変容のサンプルが蓄積される。それにより、「他のお客様にも、こんな提案をしてみたらどうだろう」とマーケティングの示唆につなげることができます。

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/02/27 09:00 https://markezine.jp/article/detail/44780

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