PDCAサイクルの高速回転を具体例とともに紹介
私たちのアプリインストール広告では、獲得数とCPI(Cost Per Install=インストール単価)を指標にトラッキングを行っている。これに加え、広告経由ユーザー全体の予測LTV、広告媒体別の獲得ユーザー予測LTVを参考指標としてウォッチしている。
これを前提とし、動画クリエイティブのPDCAについて、具体例を用いて紹介する。
まずは、アイデアをもとに動画の構成を考案し、仮説に基づいたパターン違いの4~8本を制作・配信する。下図で紹介する事例の場合は、冒頭シーンのコピーについて4種類のパターン違いを制作した。パターン出しの内容については様々な仮説が考えられるが、短尺動画でパフォーマンスへの影響が最も大きいとされる冒頭シーンでのパターン出しを実施することが多い。
配信を開始したら、基本的には媒体推奨の学習CV数(TikTokの場合50CV)が蓄積されるまでは配信を継続する。ただし、初動でCTR、CVRなどの指標を鑑みて目標CPIを達成する可能性が極端に低い場合は、学習完了を待たず配信を停止する場合もある。その場合、どの指標が悪かったのか、その理由は何かを考察し、次回以降のクリエイティブに活かす。改善が見込める可能性がある場合は、悪かった指標の改善を目指したクリエイティブ修正を行い、再度配信チャレンジすることもある。

学習に必要なCV数を獲得した時点で、ほぼ確実にいずれか1本のクリエイティブに配信が寄る。良い時はこの時点のキャンペーンCPIが目標CPIの半額以下からスタートできている。
その後は、数値の悪いクリエイティブを適宜停止しながら、目標CPI付近までCPIが悪化してくるまで配信を継続することが多い。その間に配信が寄ったクリエイティブ(=高効率クリエイティブ)の派生クリエイティブを制作し、クリエイティブ摩耗に備える。CPIが悪化したタイミングでクリエイティブを差し替え、鮮度を更新していく。
ここにはさらに伸びしろがあり、クリエイティブ制作工数をかけられるのであれば、目標CPI付近に達する前にクリエイティブの鮮度を上げ続ける。これができれば、さらなるCPI良化を目指すことができる。
これらをサイクルとして繰り返し、一度創出できた高効率クリエイティブを可能な限り派生させ、獲得数を最大化している。
また、派生クリエイティブの制作だけではクリエイティブ数がサチレーションするので、勝ちクリエイティブの傾向を基に、0→1クリエイティブも制作する。
学習済み広告セットと新規広告セットの割合の理想は8:2とされているため、この割合を目安に常に新しい広告セットの配信に取り組む。やむを得ず新しい広告セットの割合が増える際などは、全体パフォーマンスが過度に不安定になることを防ぐため、0→1クリエイティブばかりでなく派生クリエイティブの広告セットを半数程度の割合で占めさせておくことにしている。
クリエイターとの日々のコミュニケーションについて
この体制を構築するにあたり、タッグを組む動画クリエイターとの密な情報連携と前提要件のインプットは欠かせないと考えている。体制構築の初期、クリエイターには下記を実施した。
・NewsPicksサービスの詳しい説明(機能説明だけでなく、ユーザーからどういった便益が評価されているか)
・NewsPicksクリエイティブレギュレーションの説明
・NewsPicks、またNewsPicksマーケティングチームとして目指している方向性、想定しているメインターゲットの共有
・過去の高効率クリエイティブ、低効率クリエイティブ例と傾向の紹介(静止画でもユーザーインサイトが参考になる。静止画で勝ち訴求だった訴求は動画でも当たった)
・TikTok動画広告のベストプラクティスの紹介(公式から様々な情報が公開されている)
・運用PDCAの考え方の説明(実際に運用は担わなくとも、どのようなプロセスで制作クリエイティブが配信・分析されているかを認識してもらう)
初期にしっかりと共通認識を醸成することで、コミュニケーションが円滑になり、クリエイティブの修正も少なく抑えられている。
その後の日々のやりとりはSlackでいつでも必要な時に実施している。動画や修正箇所キャプチャを添付し合いながらカジュアルかつタイムリーにやり取りを行っている。制作してもらった広告の配信結果は共有し、どのような動画が結果に繋がっているかを参考としてもらうことで、制作の質も上がっていく。
初期は私たち運用チームが考案したスクリプト・簡素な絵コンテを渡し、制作のみを実施してもらっていたが、慣れてきた3ヵ月目頃からは、アイデア出しやスクリプト提案から実施してもらうことも増えた。
全ての制作クリエイティブは、マーケチームと社内デザイナーがNewsPicksの広告として問題がないかを確認し、配信へ進めている。