コンサル業界内の位置関係
「コンサル vs 広告会社」の話題を見聞きする頻度が高い。グローバルにおいても、AccentureがDroga5を買収した頃から、広告・マーケティングの領域で「コンサル」が主語の会話が増えた。
当然、人の話を聞くだけでは「コンサル事業」とは言えない。クライアントの話を聞き応対する姿勢を持つだけでは、働くすべての人が「総コンサル」になってしまう。コンサル事業やコンサル企業のコアバリューはどこにあるのか。これを整理してみようというのが本稿の主旨である。
「コンサルBIG4」という言葉がある。“会計監査系の”コンサル企業でグローバル上位4位にいるDeloitte、EY、KPMG、PwC を指す言葉で、英語圏でも使われている呼称だ。さらにBIG4の上に位置するのが、通称「MBB」。McKinsey & Company、Boston Consulting Group(以下、BCG)、Bain & Company、3社の頭文字をとって「MBB」である。
ここで言う「上位」とは事業規模の順位だけを意味しているのではない。クライアント企業の未来戦略の上位から働きかけ、頭脳として活躍することを意味する。「MBBがBIG4より上」という権威的な位置づけは、業界内の関係者なら少なからず持っている共通概念であろう。
コンサル区分の前提知識として、監査法人系のコンサル企業は上場することができない。理由は、公正な立場で監査(税務)業務を行う必要がある中、クライアントが監査企業の株主になってしまうと、利益相反が発生し監査独立性を維持できなくなるから。BIG4 の4社はいずれも非上場企業であり、McKinsey & CompanyやBCG らも同様だ。
アクセンチュアの特異性と広告会社の立ち位置
ここから本題として、コンサル業界におけるAccentureの特異な立ち位置と、広告会社が本質的に持っていないコンサル価値に焦点を当てる。
図表1でAccentureがポジションを構えているのは、MBBとBIG4の間、あるいはその両方をカバーするTier2の位置だ。クライアント企業の未来戦略に上位概念から入り込むMBB系の素養を持ちながら、BIG4 の側面も持つという特殊な位置にいる。
重要なのは、「BIG4の側面を持っている」という部分。Accentureは元BIG5 の会計監査アーサー・アンダーセンからコンサル部門だけを独立させて上場した企業であり、100 年以上脈々と引き継がれてきた「お金のプロ」の系譜を持つ。独立当初は、勤務歴が何年であれ新規で入社した社員は「まずは会計部門で2年間の修行」というフレームワークの徹底があったほどだ。
一方、広告会社や、シンクタンク系の企業、あるいはコンサルと自称する企業は、一番右側に仕分けられる。それぞれの得意分野を持つ「ブティック(専門)コンサル」の位置づけだ。上場も可能である。
たとえば、広告会社系が自社を「すべてを手掛けるコンサル」と称したところで、「M&A企業デューデリジェンス(FASコンサル:Financial Advisory Services)」や「世界事象に向けたリスク・アドバイザリー(例:新型コロナウイルスの将来予測)」「国際税務(例:グローバル・キャッシュフロー・マネジメント)」まではカバーできない。