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10代×メディアから探る、ティーンのインサイト

フィルターバブルも感覚的に回避し、情報の海を軽やかに泳ぐ。10代のメディア利用実態とインサイト

 いつの時代も10代は新たなスタンダードを先取りし、新しいメディアの使い方や未来を生み出す。そのため、10代を知ることは、多くの企業にとって非常に重要なことだ。しかし、正確なインサイトやメディア活用の情報は得られにくい。今回、幅広い世代のメディア環境をリサーチする博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所でも、特に10代の動向についても詳しい野田絵美氏に取材。10代のメディア活用の実態と、「企業が10代とコミュニケーションの際に意識するポイント」をうかがった。

手元のスマホ1台で様々なコンテンツを楽しむ10代

――博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所は幅広い世代のメディア環境を長くリサーチされています。10代のメディア活用の動向を知る意義についてどのようにお考えですか。

野田:たとえば2009年に当研究所が発表した、お風呂にフィーチャーフォンを持ち込んでワンセグでテレビを見るという高校生の習慣が話題になりました。今となっては、入浴中に動画を視聴することは当たり前の光景です。このように10代は、5年〜10年先のスタンダードな価値観や行動を先取りし、新しいメディアの使い方や未来を生み出します。10代を知ることが先々のヒントになるのです。

株式会社博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 メディア生活研究グループ上席研究員 野田 絵美氏
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 メディア生活研究グループ上席研究員 野田 絵美氏

――では、α世代とZ世代が混在した現在の10代のメディア利用には、どのような特徴があるのでしょうか?

野田:10代のメディア総接触時間は、学校という制限があるにも関わらず400分台(1日あたり/週平均)という結果が出ています。その内、デジタルデバイスの割合は8割近くにおよび、若年になるほどスマートフォン(以下、スマホ)の割合が大きくなります。

 スマホで何をしているかについては、SNSを使っている10代が9割、TVerやSpotifyなど音楽ストリーミングサービスは半数以上、Podcastも3人に1人が利用しています。スマホ1台で目でも耳でも浴びるように情報に触れ、興味の赴くままに縦横無尽にコンテンツを楽しんでいるのが今の10代です。

――お話をうかがうと、すべてがスマホで完結している印象があります。リアルや他媒体への広がりはあるのでしょうか?

野田:10代は手元のスマホで様々なコンテンツに触れられるからこそ、リアルな体験にも価値を感じています。“わざわざ”コンテンツをテレビ画面で見たり、映画館に足を運んだりするのです。また、ライブに行くといった体験はプレミアムなものとして捉えているようです。

 興味深いこととして、このようなリアルな体験は、若い世代ほどSNSで話題になったものに「後乗り」しています。最初の波乗りは金銭的な余裕とフットワークの軽さがある20代、追従するのが10代という印象です。

フィルターバブルを回避し、興味探求や学習に活用

――10代と他の世代で違う部分・変わらない部分はどのようなところだとお考えですか?

野田:SNSの利用状況には10代と20代の大きな違いはありませんが、利用スキルや情報リテラシーについては10代のほうが非常に高いです。これは学校教育の成果だと捉えています。

 たとえば、「情報が偏る」というSNSのリスクを理解している割合は20代だと3人に1人程度です。対して、10代では過半数と、他の世代を圧倒していました。

定性調査では、俯瞰して情報を見るようにしているという声も見られた
定性調査では、俯瞰して情報を見るようにしているという声も見られた

 さらに、アルゴリズムの理解度にいたっては、20代の約2倍(20代26.6%、10代52.1%)の結果が出ています。

 今の10代は、「いいね」といった反応や長時間のコンテンツ視聴により、SNSなどが自分の好みを表示することを理解しています。そこで、意識的に反応して自分の好きなものを効率的に集めたり、自分の好みを把握したりする様子がうかがえます。さらに、類似のコンテンツばかりが表示されると、あえて興味のないワードを検索したり、興味とは少し違うものも幅広く「いいね」をしたりといった工夫をしてフィードをリフレッシュさせています。

 約半数以上の10代がこのような行動を取り、アカウントを定期的にリセットする人も3割程度います。無意識的・感覚的にアルゴリズムを攻略し、フィルターバブルを打ち破っています。まさに情報の泳ぎ方をマスターしていると言えそうです。

――客観的にネットを見ているのですね。

野田:そうですね。さらに、10代はメディアを単純に受け身で楽しむものではなく、自分の興味探求や学習に活用するツールとして捉えています。10代の7割が無料動画を学びに利用し、知識やノウハウさらには感性のようなものまで学んでいます。

 たとえば、コロナ禍で部活ができないタイミングでサッカー選手の動画を一時的に浴びるように見た学生は、実際のプレイ中にフォーメーションが浮かぶようになったと語っています。同様に、ヒップホップを体得したいと思った学生は、集中して大量に聴くことで、「あ、ヒップホップってこういうものか」という感覚が降りてきたと話しています。

 インプットの量が質になるという考えは、無料や定額制のコンテンツに触れられるからこその発想だと思います。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。2013年までは書籍の編集をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/24 14:19 https://markezine.jp/article/detail/45183

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