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MarkeZine Day 2024 Spring

増収増益を重ねるアサヒビール、社長の松山一雄氏は「マーケティングと経営」をどう考えるのか?


 2023年3月、アサヒビールの新社長に松山一雄氏が就任した。さかのぼること5年ほど、同社のマーケティングに携わってきた松山氏は、「アサヒスーパードライ」の初のリニューアルをはじめ、いくつものヒット商品を主導。まさに、マーケティングが経営のドライバーになることを体現した人物と言えるだろう。本記事では、2月27~29日に開催したMarkeZine Day 2024 Springより、松山氏を迎えたセッションをレポート。聞き手は西口一希氏が務め、松山氏の実践とその根幹にある考えを掘り下げた。

2020年時点で明確だったアサヒスーパードライの強さ

西口:今日の機会をとても楽しみにしていました。というのも、私が新卒でP&Gに入社してから数年後、松山さんが中途で入社され、先輩のような立場でいろいろと相談にのっていただいていたんです。今日の松山さんのお話は、MarkeZine Dayにお越しの皆さんにとって、マーケティングそして経営の意思決定がどのような結果をもたらすかを知ることにつながると思います。

Strategy Partners 代表取締役 兼 M-Force 共同創業者 西口一希氏、セッションでは松山氏への聞き手訳を務めた
Strategy Partners 代表取締役 兼 M-Force 共同創業者 西口一希氏、セッションでは松山氏への聞き手訳を務めた

 今日は4つの質問を用意してきました。それに先立って、私が自費で行った調査を1つご紹介し、その前後でどういったことをされていたのかを伺いたいと思います。

セッションのテーマ

1.マーケティングって結局なんだ?

2.マーケティングと経営の関係

3.結果を継続的に生み出すための秘訣

4.マーケターと経営者はどう進化していくべきか

西口:20~69歳の男女1,241人を対象に、ビール業界の4社・7ブランドについて9segs(※)調査をしました。すると、アサヒスーパードライを多く購買していて「次の機会も買いたい」と次回購買意向を示す「積極ロイヤル顧客」が全体の5.5%出現しており、全体のトップでした。2位は、当時話題になっていた競合企業の新ブランドでしたが、倍以上の差があり、また20~40代と50代以上に分けてみてもアサヒビールはブランドの強さが明確でした。

 松山さんがアサヒビールに入社されたのは2018年、私がこの調査をしたのは2020年です。松山さんがアサヒビールに入られてから、(数字は)どうなっているんだろうという興味から調査をしたのですが、この時点で既に結果を出されていたんですね。その後もどんどん業績が伸び、先日発表された2023年の決算では売上収益が過去最高となっていました。ここに至るまで、何をされたのでしょうか?

松山:個別施策の前に、社内の意識を変えることが大事だったと思います。入社後すぐに営業やマーケティングなど複数の会議に出ましたが、議論が“手法”や“業界”の話に偏っていて、誰も消費者の話をしないことに違和感を持ちました。まずは「バリューチェーンの一番向こう側にいる消費者を見よう」とメッセージを出しましたね。

アサヒビール 代表取締役社長 松山一雄氏
アサヒビール 代表取締役社長 松山一雄氏

 また、会社の雰囲気が重たいことも気になりました。お酒という嗜好品の業界でありながら、あまり笑い声もなくて。顧客や消費者にとってワクワクできるビール会社を目指そうと、繰り返し話してきました。

手法論や業界事情ではなく、消費者を見よう

西口:先の調査が2020年ですから、ちょうど下地ができてきた頃だったんですね。

松山:そうですね、徐々に社内が変わってきたなと実感していました。そんな中、ヒット商品が出てからさらに大きく変わったと思います。

 2021年4月に「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」、2021年9月に「アサヒ生ビール マルエフ」を発売し、多くの方に受け入れられました。最も大きかったのは、2022年3月、35年間変えていなかったスーパードライのフルリニューアルを実施したことです。味やパッケージ、コミュニケーションも含めてすべてリニューアルしました。35年前の当時は「辛口、ドライ」が新鮮な価値でしたが、世の中の方々の嗜好は少しずつ変わってきているので、それに合わせての変更でした。

西口:では、ここから冒頭に挙げた4つの質問に入っていきます。多くのマーケターが悩まれていると思いますが、「マーケティングって結局なんだ?」という問いを最初に挙げさせてもらいました。

松山:マーケティングとは「顧客を創造すること」だと思います。お客様をつくり続ける活動、とも言えるのではないかと。従ってマーケティングがすべきは、自社のお客様になっていただけるよう、その心を動かすことです。態度変容が行動変容に結び付いて購買という結果になるので、価値を感じていただき、一度顧客になっていただいたらその関係をなるべく継続させる。これを繰り返し続けるのがマーケティングなのではないかと思います。

西口:まったく同じ意見です。今のお話は、松山さんから聞いたことがあるように思うので、私の考えは松山さんの影響を受けているのですね。ということは、以前から同じように考えておられたということになると思いますが、なぜそう考えるに至ったのですか?

松山:それは、P&Gでの失敗に基づいていると思いますね。米国のビジネススクールを出てP&Gに入り、あるブランドのフルリニューアルを担当しましたが、非常に厳しい結果でした。テスト上ではとてもよかったのですが。今振り返って考えると、現行商品が好きで使い続けている方の生の声を十分に聴けていなかったと思います。自分が立てた戦略やストーリーに酔っていたのかもしれません。

※9segs:顧客解像度を高めることで売上成長の戦略を導く、M-Force社の独自メソッド。次回購入意向(NPI)という指標で、あらゆる顧客を「今後の売上成長に貢献する顧客」と「今後の売上リスクとなる顧客」に分解して可視化。NPIを軸に、自社・競合の全ての顧客を解像度高く分解することで、売上を大きく、そして持続的に伸ばす戦略を見出していく。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/02 18:21 https://markezine.jp/article/detail/45203

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