少数精鋭で、パーソナライゼーションを実現させるためには?
アステラス製薬のように、組織としてMOpsのチームを設置するまでは至らなくても、その仕組みを取り入れることは可能です。具体的には、1人はプラットフォームを最適化する役割、もう1人がお客様にコンテンツを届ける役割と、2人1組でマーケティングの役割を分ける方法です。
こうすると、1人はフィールドマーケターとして、MOpsを担うメンバーにお客様にもっと良い体験を届けるための要望を上げる。もう1人は、MOpsとして、フィールドマーケターの意見を聞きつつ、再現性がある方法を模索し日々改善する仕組みが構築されます。このようなコンビを組めれば、人数が少なくても、日々パーソナライゼーションを通して収益貢献への一歩が踏み出していけます。
デジタルマーケティング「3つの壁」、ボトルネックはどこにある?
「経験の壁」「組織の壁」「収益貢献への壁」と、これまで3回にわたって、マーケターが直面する大きな壁とその解決策・具体的な事例について解説してきました。私が多くのマーケターを見てきた中で、ボトルネックだと感じていることは「エージェンシーに任せっぱなし」にすることです。
日本におけるマーケティングの世界では、「お金は払うので後はよろしく」とする慣行が長年続いてきたように思います。これでは企業におけるマーケティングレベルが上がらず、様々な壁を自社でハンドリングして越えることはできません。
第1回では「デジタル」「マーケティング」「お客様」、この3つをよく知ることが「経験の壁」を越える第一歩であることお伝えしました。そもそも、マーケティングが自社のお客様を十分に理解していれば、エージェンシーにお金を払って、コンテンツの案を引き出し、スケジュール管理だけを仕事にするようなことにはならないはずです。
またコンテンツの一斉配信には、経営陣や営業が求める収益増大に十分貢献することもできないケースもあります。第2回で説明した「組織の壁」では、収益という結果への貢献を説明できなければ、最悪の場合「マーケティングは必要ない」という経営判断になりかねないこと説明しました。BtoCと比べるとBtoBのビジネスでは、特に商談までが長期化する傾向にあります。したがって収益化に至るまでの貢献を可視化することは難しいと思うかもしれません。しかし、営業部門と一体となって収益化に向けた協力体制を築いていくことは欠かせませんし、経営陣を味方に付けるためには財務的な観点からの説明材料は収集しておくべきです。
そして第3回となる今回、「収益貢献への壁」を打破するため、パーソナライズが重要であること。そのためには、正確なデータを基に意思決定のできるマーケティングプラットフォームを自社のマーケティングに組みこむことが必要だとお話しました。
アステラス製薬の例で見たように、お客様により良い体験を届けるべく、PDCAを自社のハンドリングのもとで行っていく。そしてマーケティングテクノロジーを組み合わせ、キャンペーンの実行環境を整備するMOpsとフィールドマーケティングの分業を進めていくことで、この壁は乗り越えられると思います。