「ゆるく健康を目指す層」をターゲットに新ブランドを開発
MarkeZine編集部:サステナブル食ブランド「ZENB」の開発を手掛けられた石垣さんが、新たな健康食品ブランド「Fibee(ファイビー)」を立ち上げられたということで、お話を伺いにきました。Fibeeの開発は、ZENBで創造した市場や得られた知見を踏まえてのものだったのでしょうか?
石垣:おっしゃる通り、ZENBブランドでは食の新たな市場を切り開くことができたという手応えがあります。ただ正直、まだやり切れていないところがあるようにも感じていました。というのも、ZENBはどちらかというと健康意識が高い人たちをターゲット層としています。ゆえに、ZENBではアプローチできていない人たちもまだまだいると感じていたのです。
たとえば、一般社団法人ウェルネス総合研究所は、健康に対する意識のクラスタリングを次の7つに分類しています。このうち、ZENBではアプローチし切れていなかったのが「ラクして健康層」「まだ大丈夫層」「トレーニング大好き層」あたりにいる、「ゆるく健康を目指す」人々です。これらの層にも届くブランド・製品を作りたいという考えから、今回Fibeeの開発に至りました。
また、Fibeeは、中期経営計画の大きな柱の一つとして開発しており、人・社会・環境のウェルビーイングに本気で挑む意図があります。
ウェルビーイング領域が事業成長に不可欠だという理由
MarkeZine編集部:Fibeeの立ち上げには、食×ウェルビーイングの市場の裾野を広げる意図があったのですね。
石垣:はい。また、裾野を広げるという点においては、日本の生活者の実態を踏まえたところもあります。
現在、日本の人口構成の中で大きな割合を占める団塊の世代が70代後半〜80代前半、団塊ジュニアが40代後半〜50代に差し掛かっており、いずれも健康に留意しなければいけない年齢になっています。私たち食品メーカーが「食を通して健康をマネジメントする」という意味で果たすべき社会的役割は今後より大きくなっていくでしょう。
加えて、国民の所得の中央値は440~450万円。全世帯の約半分が年間500万未満で家計をやりくりしており、肉体的にも精神的にも余裕がない状況です。
世帯所得が高くない&健康アクションが必要な人々が日本には多く、このような人々のウェルビーイングをサポートすることは、自社の事業成長に不可欠であると考えます。
MarkeZine編集部:経営戦略として、生活者の健康を含むウェルビーイングの領域に注力されている理由もここまでのお話からわかりました。
石垣:現代は、誰もがあらゆる情報にアクセスできる時代です。企業が表面的に社会貢献をしているアピールをしても見透かされてしまいます。そもそも、弊社は株式を公開していないため、企業PRとしての社会貢献活動の重要性が他社よりも低いのです。
我々が中期経営計画でウェルビーイングに注力するとしているのは、この事業が本当に生活者のためになるものだと信じているから。そして、生活者からの支持を得続けるためにも、事業成長のためにも必要だと考えているからです。