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広告/マーケティングにおける7つの転換点~『2030年の広告ビジネス』番外編

これからの広告人へ告ぐ 生成AI時代、コンサルと差別化するAI活用の観点【横山隆治×細金正隆対談】

AIで気持ちを揺さぶる広告はつくれるのか?

横山:最近のネット広告は意識的にはほとんど見られておらず、興味を持ってクリックされるものはわずかでしょう。間違えてクリックさせたり、広告スペースをわざと消しにくくしたりしているものも多い。また、テレビ広告なら、例えば新人研修で聞いてみても、ほとんどの人がテレビを見ていません。

細金:過去にさかのぼれば、広告とは多少なりとも受け手の時間や意識を奪うものでした。その点では社会的な存在だから、言いたいことを言うだけではなく、エンターテインメントをつくる意図が必須だったと思います。見る人との共感を生み出すことを目指して当たり前でした。

 それが今、2%を獲得できれば98%には不快な思いをさせてもいい……という考えで若い人がネット広告に携わっているなら、広告ってそういうものじゃないと気づいてほしい気持ちがありますね。

横山:これまでは広告効果といえばプラスの効果を指していましたが、マイナスの効果も測定し注視していくべきかもしれません。

 連載第4回「フリークエンシー理論の破綻」で、同じものを複数見てもらえれば効く時代は終わったことを解説しました。特に若年層は、受け付けないものは受け付けないし、受け付けるものなら自分の中で組み立ててくれるような感じがあります。それなら、デジタルで興味を引くようなパターンを数多く出していくことが、打開策のひとつになりそうです。そこにAIが使えるといいなと思いますね。

横山:さらに広告に留まらず、イベントやAR/VRのような体験にも生かす余地がありそうです。そもそもネット広告も、かつて"インタラクティブ広告”と呼ばれて双方向性が発揮されていましたから。

細金:そうですね。やはり広告は人の気持ちを揺さぶるものだと私は思うので、エンターテインメントになりうるおもしろい広告をつくるためにAIを使ってほしいですね。

 気持ちが揺さぶられると、記憶に残ります。先のセンシングデータの利活用によって、新たにAIクリエイティブで記憶や心にのこる広告をつくれる可能性は大いにあると思います。

横山:同感です。センシングデータを教師データにAIにいろいろな角度で考えてもらうのは、マッチング性が高そうです。

 連載第6回「従来型広告枠の減少と効果減衰」において、広告会社だけでなくテレビ局も放送か配信かを問わず、コンテンツと親和性のある受容度の高いCMをAIクリエイティブでつくって提案すべき、と指摘しました。ここにもAIが寄与すると思います。

AIを活用できる人材・企業になるための視点

横山:さて、話も尽きませんが、最後に少しだけ人材の話をすると、AIを使いこなせるクリエイターとそうでないクリエイターは大きく差が開きそうです。また広告主の社内でも、人事ローテーションのために宣伝部やマーケティング部にノウハウやスキルが貯まりにくい状況が昔からありますが、AI活用に関しては属人化させず、アセットとして定着しやすいのではないかと思います。

 もちろん、これまでのように広告会社がその伴走をするのもあり得るでしょうが、会社の方針、投資額などによって、今年あたりが5年10年後への分かれ道になるのかもしれません。

細金:そうですね。AIを広告主がうまく使うには、前述のように多数を出してくる中から「うちのブランドらしさに合致するものはどれか」を見極める必要があります。裏を返すと、ブランドを確立し、自社で客観的に判断できないといけない。企業人格やブランドフィロソフィーがしっかりしていれば、外部の視点でそこを抽出するのはそう難しくないのでは。

横山:その部分は、コンサルに対して広告会社に強みがありますね。

細金:そう思います。今、私や周囲の感覚でいうと、AIは人間とは違う"機械の知性”を持ったちょっと変なメンバー、というイメージです。そういう人がチームに加わって、今までとは違う角度を交えてプランニングしているような。これからもAIはどんどん進化していくでしょうが、活用を試行錯誤したいですね。

横山:人間と同列の、メンバーにもなれるということですね。今日は興味深いお話をありがとうございました。広告やマーケティングにかかわる多くの若い人が、過去からの転換点を意識しながら、よりよい仕事に向かっていただけたらうれしいです。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/06/11 08:00 https://markezine.jp/article/detail/45753

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