DX推進のカギとなる、本社と各事業会社の役割分担とは
山本氏はDX推進について、阪急阪神HDのような複合的な企業体では、本社が進めるDXと事業会社が進めるDXは自ずと違ってくると指摘。共通IDの作成やデータ分析、決済、ECプラットフォームなどは本社が担当し、各事業会社は事業主体として、アプリを作るなどの形で顧客とつながるといった分担が肝要だという。
「実は一番危険なのは、本社がアプリを作って顧客接点を取りにいくことです。120年をかけて作った顧客接点は各事業会社にあります。DX推進とはいえ、本社がそこに介入することはありません」(山本氏)
本社がDXの推進に着手すると、グループ内の事業会社側と衝突することは少なくない。しかし「データ分析で成果をあげ、推進を実現できています」と山本氏が語るように、多くの事業会社が本社の行うデータ分析に価値を感じているそうだ。最終的には事業部門がCRMを担当し、ホールディングスではCDPを管理する。このCDPで、阪急阪神グループ全体で大切な顧客データを長く適切に保存していく。
円滑な事業継続のための、CDP選定3つのポイント
将来を見越してデータを収集・蓄積していくにあたり、CDPの選定は重要だ。同DXプロジェクトでは「Treasure Data CDP」を採用。アイテック阪急阪神(以下、アイテック)の垣之内氏は、次の3点を選定理由に挙げた。
1点目は、マーケティングツールとの連動性だ。MAやBIといったツールは各事業会社の領域であり、事業の特性や状況によって必要な要素や条件が異なる。そこで、各種ツールとの連動性が担保されていることが大きなポイントとなる。
2点目は、阪急阪神グループのデータ分析ラボでPythonを使用しているため、その連携性における相性の良さだ。
3点目は、取り込み元のデータ形式を問わない点である。本社のCDPには、各事業会社に様々な形式で保有されているデータを効率よく取り込み、クレンジングや共通化ができることが求められた。そこで、基盤として共通のクレンジング方針を持つべきだと考え、阪急阪神HDが主幹となってデータ形式や定義のすり合わせを行い、CDP内に構築した。
DX基盤構築において重視した点は、「オープン思考でSaaS型のサービスを積極的に採用すること」だと垣之内氏。従来はオーダーメイド型の開発が多かったが、今後のサービス継続性や保守性を鑑みて、極力作り込みを排除した。またWebやアプリなど、サービス層でのソリューション開発を支える基盤としては、「顧客データ基盤」と「サービス共通基盤」を準備した。
顧客データ基盤では、ID認証の基盤にSaaSを採用しつつ、前面に「認証ヘルパー」というID認証共通機能を用意。これにより、各サービス側での認証系開発を不要にしたことでコストが低減し、個人情報取得のレギュレーション管理も厳密にできるようになった。
顧客データ管理では、CDPと各事業会社の間にゲートウェイ領域を構築することで、データ投入前にセキュリティのレギュレーションを管理可能にした。データ成形でも、CDPに格納されるデータの精度が上がり、構築も効率化できる。サービス共通基盤では、HH cross IDに紐づいて提供される予約・決済・ポイントなどのサービスを順次共通化している。
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