個人情報を有効活用する先に、経済成長の余地がある
経済の本質は人間である。個々の人間の活動が経済の基本要素であり、そこに必ず個人情報がある。その個人情報を有効活用する。そこに経済成長の余地がある。新しいビジネスモデルの余地もある。経済とは「経世済民」の略語である。個々の人間活動を基本要素とし、そして、全体が一つの有機体として機能している。そこには相互扶助の原則がある。
我々は、相互依存・相互扶助の世界に生きている。だから、個人データの利活用についてその権利はまず個人にあると同時に、相互に助け合うために、マスメディアなど社会的意義が高く、公共の利益・福祉に資する企業に使っていただく。それを「個人情報有効活用法」で規定する。米国IT企業であってもGDPRに従う。同様に、日本人の個人データについては、「個人情報有効活用法」を遵守して、民放局などマスメディアに提供することになる。
2014年にノーベル経済学賞を受賞したジャン・ティロール教授は、「利用者が提供した情報と、その情報の処理や加工との間に明確な区別があるとすれば、とるべき方針ははっきりしている。情報は、提供した本人に所有権があるということだ。<中略>このように、生データの所有権は提供した本人に帰属し、処理済みデータの知的財産権は処理をした企業に帰属すると考えるのが自然だ」と書いている(引用:『良き社会のための経済学』ジャン・ティロール著)。
ちなみに、弁護士の先生から、「データの所有権」という概念はないと指摘された経験がある。この本の訳語で「データの所有権」と記載しているが、もちろん、悪意も他意もないと思うが、「データの権利、知的財産権」などの意味で捉えて欲しい。
ジャン・ティロール教授に従えば、日本人のオリジナルの個人データは、日本人にデータ権があって、処理済み・加工済みのデータはGoogleなど米国IT企業にある。
たとえば、日本人がGoogleでどんな検索をしているか、その具体的な検索キーワードの履歴データは日本人に権利がある。一方で、その検索キーワードに従って、検索結果画面が表示されるが、その検索結果画面にどんな情報が掲載されているかについては、Googleの処理済み・加工済みデータなので、Googleに知的財産権がある。
Amazonで日本人がどんな商品を購入しているのか、そのオリジナルの購買履歴データは日本人に権利がある。その購買履歴データに基づいてAmazonウェブサイトでどんな商品をレコメンドするかなどのデータについては、Amazonの処理済み・加工済みデータなので、Amazonに知的財産権がある。
