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テレビはどう生き残るか~鍵を握る「インプレッション取引」を成功させる仕組みとは~

テレビCMの価値を再定義するために不可欠なのは、デジタル広告と同様の「ターゲットCPM」

 関東キー局の2023年度決算が出揃い、ほぼすべての局でタイム、スポットともに前年を下回るという厳しい状況が明らかとなった。テレビ局が生き残っていくために、テレビCMセールスの変革は待ったなしの状況だ。テレビ局・広告主ともにWin-Winとなる変革として、筆者が提案するのが「インプレッション取引」への転換だ。そのアイデアと仕組みを提言する本連載。今回は、テレビCMのインプレッション取引を成功させるために必要な評価指標「ターゲットCPM」について事例とともに解説する。

インプレッション指標で見たターゲット毎の価値、ボリュームとCPM

 近年、様々なテレビ視聴データが各社から提供されるようになり、その便益のひとつとしてデジタル広告と効率を比較したり、あるいはもう少し進んで「テレビCM+デジタル広告」の統合リーチ&フリークエンシーを測定したりするために、テレビCMのGRPはインプレッション換算されるようになってきました。

 そこでインプレッションを指標として、テレビCMにおけるターゲット毎の価値、そのボリュームとCPMの関係を整理してみます(図表1)。

テレビCMをインプレッション指標で見た時のターゲット毎の価値
【図表1】テレビCMをインプレッション指標で見た時のターゲット毎の価値、そのボリュームとCPMを①~④に整理(クリックすると拡大します)

 すると、①テレビCMのCPMは安い、ということになりますが、それは男女4歳以上の「個人全体」の場合で、今さらそれをターゲティングが前提となるデジタル広告とそのまま比較する訳にもいきません。

 かたや、②デジタル広告の流儀になぞらえて、複数のAND条件で「メインターゲット」だけに矮小化してテレビCMを評価するのは、前回までにご紹介したようにあまり正しくなさそうです。

 とはいえ、③せっかく個人ベースの指標があるにもかかわらず「コアターゲット」(たとえば男女13~49歳)として、ざっくりと括り直してしまうのはもったいなく、マーケティング指標としても十分とはいえません。人口の半数近くを1つのセグメントとしてしまうコア視聴率は本当に広告主が求める新しい指標になっているのか? 少々疑問に思えます。

 そこで、④テレビCMの特性を生かした「周辺ターゲット」を含む「総量評価」で、適切なCPMを“質と量”で再定義していくことが必要となります。これは、コネクテッドTV(CTV)などでのストリーミング視聴が国内でも増加する中で「テレビ×ストリーミング」時代における重要な評価の考え方となります。

 図表2は、実際のテレビCMキャンペーンにおいて上記①〜③のCPMを試算してみたものです。事例としたのは若者層向けに新発売された茶系飲料で、全日型スポットを関東エリアでは個人全体で381GRP投下しています。%コストをキリ良く15万円と仮定するとCM費用は約5,700万円です。

テレビCMキャンペーンのCPM試算例(関東エリア)
【図表2】実際のテレビCMキャンペーンのCPM試算例(関東エリア)。①~③のボリュームとCPMがイメージできる。(クリックすると拡大します)

 このキャンペーンの総インプレッション数は1億6,300万回ですので、①個人全体のCPMは約350円となります。たしかに非常に安いです。

 ですが、②メインターゲットをF1(女性20~34歳)とするならば、CPMは6,940円まで上昇します。つまり、%コスト15万円でGRP取引されたこのCM枠(340本)を仮にF1だけのインプレッション数で取引するなら、CPMは約7,000円で売買されないとテレビ局収入は現状維持もできないということになります。

 インプレッション数は合算できるため、男性を加えたMF1層(男女20~34歳)でも見てみます。F1のインプレッション820万回にM1の810万回を合算した1,630万回で試算してみるとCPMは3,500円になりました。当然ですがCPMは約半分となります。

 しかしMF1へのインプレッション数は、この事例に限らず平均で個人全体の10~11%程度しかありません。今後、もしMF1比率がこれよりも下がることになれば、このCPMはもっと高騰することになります。

 ③コアターゲット(男女13~49歳での試算)は約1,950万人ですので、関東エリアのテレビ視聴測定対象の4,200万人に対して人数比率は46.4%となりますが、インプレッション比率では33.6%でした。CPMは1,050円となりました。

 整理すると、CPMは①個人全体:350円、②メインターゲットF1:6,940円/MF1:3,500円、③コアターゲット:1,050円です。④メインターゲット+周辺ターゲットのCPMは、この①と②の間になることになります。

 ただし、①~③は過去のキャンペーンからCPMを試算したものです。④は、これから設定していくCPMとなります。したがって、周辺ターゲットの設定により③より高いか/安いかは変動します。また、④は単に1つのCPMを設定すればいいという訳でもありません。

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周辺ターゲットも勘案した「ターゲットCPM」とは?

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この記事の著者

横山 隆治(ヨコヤマ リュウジ)

横山隆治事務所 代表取締役ベストインクラスプロデューサーズ 取締役トレンダーズ 社外取締役1982年青山学院大学文学部英米文学科卒業。同年、旭通信社(現・アサツー ディ・ケイ/略称:ADK)に入社。インターネット広告がまだ体系化されていなかった1996年に、日本国内でメディアレップ事業を行う専門会社「デジタ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

楳田 良輝(ウメダ ヨシテル)

株式会社プログラマティカ 代表取締役社長関西学院大学卒。広告会社で営業部門を経験後、経営及び人事部門でデジタル領域への投資・事業戦略や組織・制度変革等を担務する。メディア部門を担当後、デジタルエージェンシーを経てコンサルティング会社に経営参加。大手広告主に対するマーケティング・コンサルティング業務等...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/08/26 15:22 https://markezine.jp/article/detail/46009

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