上流工程に携わるためのキャリアの築き方
──広告制作や運用だけでなく、上流工程に携わりたいと考えるマーケターは多いと思います。広告代理店で働かれていた間、仕事をする上で何を意識していましたか?
意思決定層の方々と接する機会を積極的に作り、経験を積むチャンスを探していました。たとえば競合プレゼンがあれば手を挙げて、経営者の方の前で話す機会を得たり、案件を担当する社長の考えを直接伺ったり、リーダー層の方々との会話をなるべく増やせるように意識していました。

また広告代理店で培ったスキルで、今も役立っていると思う点が三つあります。一つ目は、ユーザー理解です。「どんなユーザーが、何を欲していて、どうすれば動いてくださるのか」という仮説を立てる力は、戦略や企画の基本であり、どんな仕事でも応用できると思います。
二つ目は、手段横断という概念です。私が代理店で働いていた時は、ネットワークアドやGoogleアナリティクスが登場したり、CRMの概念が普及したりと、デジタルを中心に新しいツールや手法が次々と登場していました。この環境下で、様々なメディアや仕組みを組み合わせて、広告キャンペーンとしての最適解を考える経験を積みました。一つの課題に対して、様々な手段から最適解を探すフレームワークは、今の仕事にも役立っていると思います。
三つ目は、クライアントとのリレーションです。お互い「正直に」話せる関係性を築いて、言いにくいことも伝え合えるほうが、プロジェクトがスムーズに進みます。具体的な資料やアイデアを用意して正直な意見を伺ったり、「無知の知」の姿勢で不明点を明確にして課題の解像度を高めたりすることを意識しています。オフィスに直接伺うことも大事にしていますね。
これからのI&COは強みを生かし、変化をナビゲートする存在へ
──今後のI&CO Tokyoの姿をどのように描いていますか?
I&CO Tokyoは、今年の7月で5年目を迎えます。最初は2名だったメンバーも、現在は20名となり、多様な課題にお応えできるチームメンバーが揃っています。その知見とチームの専門性を生かして、クライアントの「3年後にあるべき仕組み作り」を支援していきたいです。
これから3年後を見据えた時に、企業やブランドにどのような課題があり、それに対してどのようなデザインやアウトプットがあれば、中長期的に良いインパクトをもたらせるのか。引き続き、チームでチャレンジしていきたいですね。
ブランドの定義やプロダクト・サービスデザインといった従来の支援領域に加え、企業やブランドのパーパスを明確化し、それを実現する取り組みの強化、グローバルでのブランド展開、デジタル上のプレゼンス向上につながるプロジェクトにも注力していきます。言うなれば、より変化をナビゲートする存在を目指します。
また、お話しさせていただく企業様の数を増やしていきたいです。まだ具体的に固まっていないアイデアでも“壁打ち相手”として気軽にご相談いただくことで、弊社の強みを発揮できると考えています。今もクライアントの方々には、海外での事例や動向、数年後の展望などを共有することで、今後の事業展開を考えるための刺激材料にしていただいています。
今年の4月、I&COはシンガポールに新たなオフィスを設立しました。ニューヨークとシンガポールと東京、それぞれの言語とカルチャーに精通したメンバーがいるので、3拠点ある強みを生かして、さらにクライアントと社会の役に立っていきたいです。