「現場のマーケターが使いこなせるAI」を重視
MarkeZine:先ほど「複雑な技術」を用いているとのお話がありましたが、Rtoaster GenAIは、どのような要素技術や機能でできあがっているのでしょうか?
中田:Rtoaster GenAIは生成AI単体をフロントに添えたようなアドオンサービスではなく、生成AI技術を組み込んだ開発に仕立てています。GoogleのマルチモーダルAIを活用し、商品マスタ・商品画像・説明文・行動ログに加え、消費者が入力したテキスト文を含めた複数のデータを統合的に解析し、「検索意図を文脈」で解釈し、その文脈ごとに動的なテキスト説明文の生成を行っています。これは、ブレインパッドのコア事業である「データサイエンティスト」や「データエンジニア」のノウハウと、Rtoasterの「SaaSプロダクト開発」の技術コラボがあって、この製品開発に至っています(※現在特許申請中)。
皆瀬:実装目線では、現場のマーケターが“使いこなせるAI”を目指したことも大きなポイントにあります。私は長年営業をしていますが、マーケターの“不安“”不満“であった、「導入が面倒くさい」「仕組みが理解できない」を解消するために、「タグレス導入」や「説明可能なアルゴリズムの仕組み」に拘りました。そのスタンスがとても好評であるとお客様から評価いただいてます。マーケターは、SaaS導入に疲弊しており、新たなツール導入は億劫なものになっています。「高機能・難易度」を追い求めるよりも「使いやすい」「わかりやすい」「入れやすい」を今回開発コンセプトとして「マーケターに生成AIを実感してもらう」ことを第一思想に置きました。
中田:またパーソナライズ系SaaSを既に多数導入し、運用している企業も多いと思います。それを入れ替えるとなると大変であるため、今回の機能はRtoasterだけでなく、他社の既存SaaSとも共存できる開発設計も視野に入れています。これによって隣接するSaaS企業から「OEMしたい」という相談が来るようになっています。今後、マーケティングSaaS同士の柔軟な連携ができることは、今までのビジネス展開の大きな違いであり、私たちの武器になると考えています。

検索は“探す手段”から、“商品と出会う体験”に
MarkeZine:最後に、今後の展望をお聞かせください。
皆瀬:従来の検索は「商品名」や「明確なニーズ入力」が前提でしたが、実際の購買には「なんとなく探したい」という“曖昧な動機”が多くを占めていますよね。対話型UXの一翼となる「Rtoaster GenAI」は、こうした「曖昧な気持ち = シーズ」に応えることができる、現在では稀有なソリューションになりつつあります。
また今回生成AIで生まれた対話ログや新たな商品説明文は、単にECサイト上での表示だけでなく、LPの文面や、広告文や商品企画に波及できると考えています。Rtoasterは単なる接客支援だけでなく、消費者のインサイトを溜め込んだCDPに深化させ、今後のマーケターの業務の意思決定基盤としても活きると感じています。
生成AI元年の今こそ、「マーケターの“不”」に徹底的に向き合い、先進技術を“用途に”変えて、マーケターの仕事が“購買体験の演出家”として楽しんで活躍できる、そんな一歩を踏み出せる時にわたしたちのRtoaster GenAIが起点となっていけたらと思っています。
中田:マーケターの“不”はまだまだ至るところに潜んでいます。たとえば、商品マスタの情報整理ひとつとっても、「人手が足りない」「タグ設計が間に合わない」「SKUが膨大で管理できない」など、ひとたび手を付けると疲弊する業務は多くあります。「商品マスタの自動タグ付与の生成AI(アノテーションエージェント)」など、Rtoaster GenAIの周辺機能群も既に提供開始しており、今回このSaaSの裏側に機能実装しています。この機能は、生成AIによる自然なタグ付けを通じて、商品情報を人間の発想に近い形で整理できる仕組みです。
これも「シーズドリブン型」で着想しており、運用者に負荷をかけず自然とECやCRMに連携ができる「お客様が悩む課題を先回り」して作っていくのがブレインパッドのプロダクトビジネスの目指す姿です。データサイエンスの専門企業が作るSaaSだからこそ、「データ活用が自然と行われている感覚」の世界観を作っていきたいです。
皆瀬:また弊社のCMO近藤はよく『市場は競争ではなく、共創である』と言っているのですが、今回のRtoaster GenAIはまさに、“市場をともに盛り上げていく”起点となり、SaaS業界全体を再び盛り上げていくきっかけになれるのではないかと期待しています。今後は協業先や他社SaaSにも提供し、より広いマーケット全体を活性化させていきたいですね。
