企業に必要な視点はシンプル、「困りごとをどう解決するか」
――ここまでの話から、性というテーマが個人の生活に密接に結びついていることがわかります。ビジネスの観点から企業はフェムテックをどのように捉えるとよいと考えますか?
西野:前提として、私たちはフェムテックという領域に参入したというよりも、気づいたら自社の製品がフェムテックと呼ばれるようになった背景があります。
このことを踏まえてお話しすると、フェムテックが流行っているから、あるいは売れそうだからという理由で参入するのではなく、本来必要なケアに焦点を当てることが重要だと考えています。「この困りごとをどうしたら解決できるか」というシンプルな視点が大切なのではないでしょうか。
企業側から見ると、フェムテック市場は既に飽和状態に見えるかもしれませんが、当社の調査によると、一般女性におけるフェムテックという言葉の認知度は10%程度にとどまっています。企業側の認識と一般消費者の認識には乖離があると考えられます。
たとえば月経カップや吸水ショーツの存在は知っていても、使い方がよくわからないため手に取ったことはないという方も少なくないかと思います。まだまだ一般の方がフェムケア商品を手に取るまでには距離があります。この溝を埋めるためにも、女性が日常的に困っていることに対して「このような解決方法があります」と提案する、シンプルな視点で取り組んでいくことが大切だと思います。
フェムテックは名乗りやすいがゆえに、嗜好品的な製品も多く見られます。しかし、海外の市場を見ると、装着するだけで自動的に搾乳してくれる搾乳機など、女性の生活に実質的な改善をもたらす製品が多く見られます。このような、本当に生活を改善する分野はまだまだ開拓の余地があると感じます。
仲間を増やしながら、より幅広い領域へ広げていく
――最後に、フェムテックや女性のセクシュアルヘルスについて、貴社の思いやこれからの目標などをお聞かせください。
西野:昨年、irohaは10周年を迎えたタイミングで、プレジャーアイテムやデリケートゾーンケアアイテムだけでなく、女性の幸せな人生を多面的にサポートしていくフェムケアブランドとして、ブランドが掲げるステートメントを一新しました。

今後は、より幅広い領域で女性に寄り添える存在として、年齢やライフイベントごとの悩みに対応できるケアアイテムを展開していきたいと考えています。
若い方々はプレジャーアイテムなどを手に取るハードルが低い傾向にありますが、年齢が高い方々の中には、これらの製品に触れる機会があまりなかった方も多くいらっしゃいます。そういった方々にも気軽に試していただけるよう、またポジティブに捉えていただけるようなプロジェクトや情報発信を様々な形で展開していきたいと考えています。
月島:仲間をさらに増やしていきたいと思います。西野が申し上げた通り、妊娠・出産に関する問題、更年期の課題など、女性は様々な悩みを抱えていますが、これらに悩んでいるのは決して一人ではないということを伝えたいです。
お互いに経験や思いを共有することで、みんなで性をポジティブに捉え、楽しめるような雰囲気を作っていけたらと考えています。
同時に、女性だけでなく男性も一緒に参加できるような取り組みにも力を入れていきたいです。お互いに歩み寄り、理解を深めていくことで、みんながより幸せになれるよう取り組んでいきたいと思います。