デジタル広告時代に考える、テレビCMの強み
MZ:デジタル広告が全盛の今、CMの強みは何でしょうか?
奥田:一番のメリットは、スケールが大きく一気に普及できるところにあります。ハイリスク・ハイリターンな施策ですから、一発放映の本番検証ではなく事前検証可能な問題に置き換え、検証するパターン数や仮説を深め、広げていけるかが重要になるでしょう。
デジタルマーケティングは利用意向が見込めるユーザーにリーチ可能ですが、一方でテレビはフルリーチ・オールターゲットの媒体です。デジタルも利用意向形成においてクリエイティブは重要ですが、テレビCMのクリエイティブはターゲティングと利用意向形成を兼ねる意味で最重要になります。「英語学習者の皆さん、こんなにいい商品があります」というメッセージに15秒で気づいてもらう必要があります。
テレビCM開始前の「スタサプENGLISH」の状況を振り返ってみると、デジマ施策に飽和していたと感じます。当然ながら、最初は「利用意向が高いセグメント」を狙って展開したほうがリスクは低いですよね。
ただ、デジタルで効率的にリーチできるセグメントも限りがあるので、続けていくとどこかで施策が非効率になるわけです。私たちの場合は、そのラインに来たタイミングでテレビCMに移行することにしました。
テレビCM施策で、デジマ経験者が調査を始めるには?
MZ:奥田さんは、元々デジタルマーケティングに携わられていましたが、CMにおいてもターゲット調査は重要かと思います。デジマ担当者はどのように習得するのが良いでしょうか?
奥田:調査と聞くと特別な専門スキルが必要のように感じますが、必要な考え方はデジマにおけるアクセス解析とさほど変わりません。デジマの場合はGoogle Analyticsのデータなどにセグメントをかけてクロス集計するわけですが、テレビCMの場合は「世の中に対して」アクセス解析をする着想でやれば、意外とすぐに調査できるようになります。
アクセス解析の入門においても、最初は既に取れているデータから分析を始めますが、レベルが上がると取れていない情報を取るためのログ設計から行えるようになる。これはテレビCMの調査においても同じで、最初は既存のデータ分析から始めて、次に設問設計ができるようになればいい。最初からいきなり設計できることを目指すのではなく、分析から入り、分析力と設計力を同時に身につけていくことが重要です。
奥田:サイトのアクセスデータもサイトUIに対するユーザーの行動ログですが、定量調査も設問文と選択肢という調査サイトのUIに対するユーザーの行動ログです。聞き方が悪ければ誤認の回答データもありますが、サイトのアクセスログも同じですよね。論理的に正しいだけではなく、ユーザーの印象や認識を踏まえて設計・解析をかけることが必要です。
一見すると調査自体が複雑化して見えますが、根本は変わらないことを理解してシンプルに進めるのがいいと思います。改めて、調査もアクセス解析もユーザーの理解のため、意図した商品やサービスが狙い通りに認識・届いているのか確認するためにやることです。「この人にどう伝えれば心が動くのか」という発想が重要です。