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「スタサプENGLISH」のCM開発に学ぶ!調査ドリブンと面白さを両立したクリエイティブを導くマーケターになるには

効果的なCMクリエイティブ制作のために、マーケターが実践すべき「5つの思考法」と「2つのスタンス」

 認知拡大やブランディングに大きな効果を発揮するテレビCM。しかし様々なハードル・進行上の課題に悩むマーケターや、コストの高さなどの理由でCM施策に踏み切れない企業も少なくない。本連載では、リクルートのオンライン学習アプリ「スタディサプリENGLISH」のCM開発に携わってきた奥田氏が、施策のフェーズごとに重要なポイントや、調査ドリブンと“データを超えた面白さ”を両立するクリエイティブ作りに必要な思考を解説。第3回は、効果的なCMクリエイティブ制作のためにマーケターがすべきことや持つべき考え方について掘り下げていく。

CMクリエイティブの仮説を導出する「5つの思考法」

MarkeZine編集部(以下、MZ):連載の第3回目では、CMのクリエイティブ仮説の作り方にフォーカスして聞いていきます。連載の第1回で、「CMの勝ちパターン」に固執すると似たようなクリエイティブばかりが生み出される壁があると伺いました。マーケターがクリエイティブにおける攻め方を考える際は、何を意識すれば良いのでしょうか?

奥田:似たクリエイティブが生み出されてしまうのは、仮説導出の方法を意識的に使えていないからだと思います。クリエイティブ仮説を導出する5つの思考法と、それを使う際に意識している2つのスタンスをご紹介します。まずは思考法からお話ししましょう。

奥田:前者の2つ「構造から考える」「指標から考える」は、第1回でお話ししたCM制作で超えるべき2つの壁(視聴者の壁・ターゲットの壁)の話につながります。クリエイティブで狙いたい状態が分解されているからこそ、何を満たす必要があるのか、考えるべきかが明らかになります。ここでは、CM想起率・純粋想起・利用意向が高いクリエイティブを作ることが手がかりとなります。

 この2つの考え方はCM制作に限った話ではなく、事業戦略やデジタルマーケティングの最適化を考える際にも用いる思考法です。リスティング広告を例に挙げると、表示回数・クリック数・コンバージョン数というフォールアウト構造と、それに紐づく形で改善するドライバーとして広告文改善や入札強化が挙げられます。

 それと同様に、テレビCMを捉えるとどうだろうか?という視点で考えてみることです。テレビCM施策は大規模で複雑な現象だからこそ、構造と指標で全体像を掴むことが大切です。

奥田:特にCM想起率を引き上げるクリエイティブを作る際に、意識したいのは「普遍性」と「時代性」という構造です。コンテンツ制作においてよく用いられる枠組みですが、CM制作においても有効です。

 印象に残るCMは、面白いものや、ストーリーもの、音や歌もの、キャスティング自体の驚き、など普遍的な要素があると思います。またその普遍性が時代に沿った形か、良い意味で裏切る形で表現できていることがヒットの法則だと考えています。

MZ:残り3つの要素はいかがですか。

奥田:映像や表現を考えるために必要になるのが、残り3つの要素になります。「メタファーから考える」は補助的な思考法ですが、行き詰まった際に活きる便利な方法です。いきなり「クリエイティブ仮説を出せ」と言われても難しいと思うのですが、そんな時日常生活においてクリエイティブな検討をやっている例はないかと考えてみるのが有効です。その際に、どのように考えているのか観察し、転用できないか検討してみるわけです。

 その答えの一つは「ファッション」だと思います。良いファッションをするためには、ファッション雑誌を見たり、街行く人を見たり、おしゃれのセンスをまず磨くと思います。また別の例として、近年の生成AIの進化は大量のデータインプットに対して良し悪しのフィードバックがあって、高度な回答ができるようになっています。

 その2つから、「パターンから考える」という考え方が導出できると思います。AIもファッションも大量の現象の中から成功や失敗のパターンを掴んでいくもの。その上でクリエイティブ仮説まで落とすために最後に必要なのは、「要件から考える」こと。パターンからさらに骨となる要件を抽出するのです。要件とは、考えるべき仮説が超えるべきハードルという意味です。

株式会社リクルート プロダクト統括本部 マーケティング室 自動車領域担当部長 兼 新規事業開発担当マネージャー奥田 真嘉氏2013年にリクルートに入社後「ゼクシィ」のデジタルマーケティングを5年間担当。その後、事業開発や経営企画を経て「スタディサプリENGLISH」を5年間担当し、現在は新規事業開発の担当マネージャーと自動車領域の部長を務める。
株式会社リクルート プロダクト統括本部 マーケティング室 自動車領域担当部長 兼 新規事業開発担当マネージャー 奥田 真嘉氏
2013年にリクルートに入社後「ゼクシィ」のデジタルマーケティングを5年間担当。その後、事業開発や経営企画を経て「スタディサプリENGLISH」を5年間担当し、現在は新規事業開発の担当マネージャーと自動車領域の部長を務める。

「クリエイティブの攻めどころ」の決め方

MZ:「スタディサプリENGLISH(以下、スタサプENGLISH)」のCMシリーズでは、“クリエイティブの攻めどころ”をどのように設計しましたか。

奥田: 最新CMの「“ス”タサプ ダンス篇」では、普遍性として今までやったことがない「歌もの」へのチャレンジを、時代性として短尺動画の流行を受けて見る人の注意の取り方とキャスティングにこだわりました。

 具体的にイメージを固める方法は、先ほどお伝えした生成AIの学習方法と似ています。大量のデータをインプットすれば、最適なクリエイティブをアウトプットできるようになる。その方法を人間に応用し、自分にどんなデータを膨大にインプットすればアウトプットのポイントが掴めるのか、と考えます。今回は、過去の「歌もの」CMを洗いざらい見て、そのパターンの中から要件を定めていきました。

 チームで考えた歌ものCMの成功要件は、「商品のコアコンセプトが伝わる」かつ「音が印象に残る」を両立していることです。また既存曲を使うと決めていたので、後者はさらに、原曲の識別性や良さが残っていることを重視しました。今回は童謡「しょうじょうじのたぬきばやし」を用いましたが、原曲の良さが世の中に耳残りしている理由、たとえばリズム感の良さをきちんと残して使おう、ということですね。

 最後のポイントは、タレントらしさ。誰が演じているか・歌っているかによって、より際立つものがあります。今回は、俳優の斎藤工さんが歌って踊る様子がコミカルでもあり、ギャップでもありました。

 具体的に楽曲に落とし込んでいく際には、代理店様含めての制作チームで事例やパターン、要件をすり合わせ、音楽制作のプロに数度楽曲を提案いただきました。

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なぜ「歌もの」CMにチャレンジしたのか?

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/27 08:00 https://markezine.jp/article/detail/47170

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