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「スタサプENGLISH」のCM開発に学ぶ!調査ドリブンと面白さを両立したクリエイティブを導くマーケターになるには

CM制作のチームワークにおいて、マーケターがすべき「3つのこと」──言語が異なるプロと協働するために

 認知拡大やブランディングに大きな効果を発揮するテレビCM。しかし様々なハードル・進行上の課題に悩むマーケターや、コストの高さなどの理由でCM施策に踏み切れない企業も少なくない。本連載では、リクルートのオンライン学習アプリ「スタディサプリENGLISH」のCM開発に携わってきた奥田氏が、施策のフェーズごとに重要なポイントや、調査ドリブンと“データを超えた面白さ”を両立するクリエイティブ作りに必要な思考を解説。第4回では、同じく「スタディサプリENGLISH」CM施策に関わる進藤氏を交えて、制作チームをはじめ様々な関係者が携わるCMの企画・制作においてマーケターが果たすべき「3つのこと」について聞いた。

「注視ポイント」はあらかじめ言語化しておく

MarkeZine編集部(以下、MZ):今回は、テレビCM「スタディサプリENGLISH(以下、スタサプENGLISH)」シリーズに携わられているリクルート マーケティング室 進藤さんにもご参加いただき、お話を聞いていきます。まずは進藤さんのミッションと、奥田さんとの役割分担を教えてください。

進藤:「スタサプENGLISH」のCMシリーズでは、マーケターとして投資設計から調査、クリエイティブのオリエンテーション、議論進行までをワンストップで担当しています。そのため、外部パートナーのクリエイティブディレクターとのやり取りなども、私に集約される形で進めています。

奥田:私はマーケティングマネージャーとして、CMに閉じないマーケティング全体戦略の設計と、CM制作においては制作検証スキームや体制作りにコミットしています。進藤が「スタサプENGLISH」のマーケター代表として社外パートナーとの議論をフロントに立って進行しますが、社内のディスカッションパートナーとしては私が進藤と仮説議論を行い、全体設計とCM設計の統合やブラッシュアップを図っています。

進藤様&奥田様
左:株式会社リクルート プロダクト統括本部 マーケティング室 自動車領域 兼 社会人語学領域 マスプロモ担当 進藤ももこ氏、
右:株式会社リクルート プロダクト統括本部 マーケティング室 自動車領域担当部長 兼 新規事業開発担当マネージャー 奥田真嘉氏

MZ:進藤さんにお伺いします。CMのクリエイティブ制作において、視聴者の関心を一瞬で得るためのポイントはありますか?

進藤:ただ調査ドリブンでCM制作をしていると、どうしても伝えたい内容が増えてしまい、その結果CMとしてつまらない説明的なものになりがちです。そのため「スタサプENGLISH」チームでは、CMはまず“見てもらえないもの”として前提を置きました。その上で、視聴者が思わず見てしまうポイントを「注視ポイント」と呼び、制作チームと一緒に議論して事前に設定しています。

 最近の縦型動画の流行を考えても、「15秒ですら長い」と感じる視聴者が多いとすると、中だるみしないように注視ポイントも一つではなく複数を設けるようにしています。実際に、最新のCM「“ス”タサプ ダンス篇」では、俳優の斎藤工さんやダンサーたちが“ス”のポーズでズラリと並ぶシーンや、斎藤さんの顔のアップ、BGMを止めて「1回3分ぷーん」というセリフなどが入っています。これらが、事前に狙って設定していた注視ポイントにあたります。

 また、冒頭のカットも斎藤さんが“ス”のポーズを取るシーンから始まる予定でしたが、実際に撮影現場でカメラを見ると「注視ポイントを設定していたものの、これでは見た瞬間に注視が取れないのでは」と議論になりました。そこで急遽、斎藤さんのお顔のアップ画像で撮ってもらい、差し替えることになりました。

 注視ポイントをあらかじめ規定していたからこそ、現場で企画時点との仕上がりのズレに気づき、軌道修正できました。そういった意味でも、注視を得られそうなポイントを事前に意図的に言語化しておくことが大事だと感じます。

注視ポイントをもとに「常にThink again」せよ

MZ:その注視ポイントは、どうやって定めていますか?

奥田:注視ポイントの作り方は色々ありますが、たとえば視聴者から違和感をもって受け止められる演出にはどんなものがあるのだろう、といったことも考えます。あとは、普段から自分や人はついつい何を見てしまうのか、といった傾向を掴んでおくことが大切だと思います。連載の第3回でお伝えした通り、そこからパターンや要件を見つけ適用していくことが有効です。

 実際にCMを作っていく際には、企画・演出・撮影・編集と進むに連れて、検討品質も関わる人も増えて、品質も上がっていきます。ですが、当たり前と思えるような注視ポイントもあえて明確に言語化しておくことが大切です。CM制作のプロからすると当然のような企画や演出上の狙いも、言語化することで「もっと進化できないか」と考えるきっかけにもなります。

 先ほど進藤がお伝えしたように、企画時点の狙いとしては秀逸だと思われるものでも、実際に撮ってみて軌道修正をしたほうがいいと気づくことが少なからずあります。これは第3回で述べた「常にThink Again」にあたります。

 注視ポイントの中で軌道修正をかけるか、時には撮影現場で注視ポイント自体から設定し直す大手術も、いとわずに検討します。土壇場で対応可能なことは限られますが、考え抜いた末の意外な微修正が品質を一気に押し上げることは稀ではありません。

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CM制作のチームワークにおいてマーケターがすべき「3つのこと」

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/12/12 08:30 https://markezine.jp/article/detail/47171

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