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マーケター必読!論文のすすめ

小説の映画化から、サブスク、「聖地巡礼」まで──コンテンツビジネスをめぐるマーケティング【論文紹介】

番組宣伝広告に歓喜するファンたちの心理とは

 先述のように、たとえば小説として生産されたコンテンツが、映画として再生産されて、ファンを二度喜ばせることがあるわけですが、それと同じように、コンテンツは単なる広告が、ファンを大いに喜ばせることがあります。

 たとえば、食べ物の広告に、巧妙に食べ物が表現されていても、その食べ物を消費したことにはなりません。しかしテレビアニメの広告に、キャラやストーリーが表現されていたら、アニメというコンテンツを消費したことになります。それゆえ、アニメファンは、広告に歓喜することがあります。

 これに注目したのが、明治大学専任講師の竹内亮介先生と慶應義塾大学大学院生で城西大学非常勤講師の王珏先生の英文論文「消費者にとって製品のように映る広告 ― コンテンツ再現性の影響 ―(PDF)」(※和訳PDF付き)です。

 彼らによると、製品としてのコンテンツの視聴に結び付くのは、コンテンツに詳しくメッセージを理解できる通行人だけであるものの、それ以外の通行人も広告の中のコンテンツの視聴を楽しみ、好意を抱きます。それゆえ、将来につなげるためには、広告にはコンテンツの放映日時や販売場所の情報だけでなく、コンテンツそのものを含ませるべきでしょう。

コンテンツのサブスクリプション・ビジネスにおいて留意すべき点とは

 近年、大量のコンテンツを視聴し放題のサービス「サブスクリプション(サブスク)」が、提供されるようになりました。関西大学教授の千葉貴宏先生と慶應義塾大学大学院生の北澤涼平氏の英文論文「コンテンツ配信サブスクリプションにおける消費者の満足度および継続意図(PDF)」(※和訳PDF付き)は、この点に焦点を合わせ、いかなるサブスクが顧客満足や契約継続をもたらすかに迫りました。

 良質なコンテンツを取り揃えるべきことは当然ですが、取り揃えられた大量のコンテンツのうちどれを視聴するべきかという、「おすすめ」の表示が仇となりがちであり、自力で視聴するコンテンツを決めたユーザーのほうが満足度は高く、推奨に従って視聴したコンテンツが不満だった場合、とりわけ一般コンテンツより独自コンテンツのほうが離反の危険性が高いといった知見が読み取れます。

 明治大学准教授の小野雅琴先生の和文論文「デジタルコンテンツ・サブスクリプションサービスの消費者選択要因(PDF)」は、サブスクモデルと、従来型のパッケージモデルの選択問題に焦点を合わせた論文です。サブスクは、「コンテンツをメディアに収納したパッケージの形で所有できない」という欠点を補償するほどに安価であることが重要であり、音楽や動画の場合、そのバラエティの豊富さは実はさほど重要ではない一方、絵画の場合には、好みが定まっていないためか、バラエティの豊富さが重要であるといった知見を提供しました。

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聖地巡礼ノートにおけるアニメファンの書き込みから、読み取れることとは

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この記事の著者

小野 晃典(オノ アキノリ)

慶應義塾大学商学部教授。1995年 慶應義塾大学商学部卒業、同大学院商学研究科修士課程・後期博士課程修了。博士(商学)。慶應義塾大学商学部助手、専任講師、助教授、准教授を経て2010年より現職。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/08/27 08:30 https://markezine.jp/article/detail/46454

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