難関だった企業アカウントの統合に進捗が
──LINEヤフーの誕生から1年が経とうとしています。LINEとヤフーの統合前に想定していた広告事業への影響や変化と、統合後の実態について教えてください。
統合する前は、両社が提供するサービスの融合や新しいサービスの創造に、すぐ着手できると思っていました。ただ、ヤフーもLINEもそれなりに長い歴史を持つ企業です。融合・創造は各社のメンバーが培ってきたものを手放したり壊したりする側面も含みますから、私が想像していた以上に慎重さを要しました。
一方で、これまでの取り組みに対して強い思いを持ってくれていたからこそ、メンバーが未来に向けた構想に共感・共鳴してからの進みは非常に早く、緻密でした。
──この1年を振り返って、Connect One構想の進捗をお話しください。
Connect One構想とは、LINE公式アカウントを起点に当社のあらゆるアセットを連携し、ユーザーのLTVを最大化するプラットフォームとして提供するものです。実現に向けたファーストステップとして、LINEとヤフーが提供していた法人向けサービスの企業アカウントを統合する必要がありました。統合のハードルは非常に高いと考えていましたが、おかげさまで進み始めています。
企業アカウントの統合が進んだ先のセカンドステップとして、プラットフォームの整備があります。これが実現すれば、企業が一つのプラットフォーム上で当社の様々なツールにアクセスすることができるようになるわけです。現在は一部の企業を対象に、アナログなやり方でテストを行っています。
「商品が売れる設定」を自動化できる未来も?
──アナログなやり方とは、具体的にどのようなものでしょうか?
LINEの法人アカウントとヤフーの法人アカウントをまだ統合できていない企業Aに対して、両アカウントのデータを当社が手動でつなぎ合わせ、クロスオーバーしたデータを使って広告を配信できるようにしています。LINE公式アカウントの広告配信においては、LINEとYahoo! JAPANのデータを掛け合わせた配信と掛け合わせない配信で、クリック率に10~20%の差が出ている事例もあるのです。
当社には数多くのツールが存在しています。Yahoo!ショッピングに出店している企業の多くが、売上をブーストするためにYahoo!ショッピング内で広告を配信するためのツールを使っていますし、それとは別にLINE広告、Yahoo!広告を配信するためのツールもある。Connect One構想では、これらのツールを一つに束ねようとしています。そのためのアーキテクチャを今まさに描いているところです。
──アセットが豊富な分、自社に必要なツールを選び取る眼識や、使いこなす力量が利用する側に求められる気はします。
おっしゃるとおりだと思います。だからこそ、我々が最低限のオートメーションを実現したいです。たとえば「オンライン上で商品が最も売れるようにする」「実店舗に新規顧客を送客する」と指示すれば、最適なツールや設定が推奨される自動レコメンドの仕組み。これは、プラットフォーマーの責任として用意します。それだけでは広がりがないため、パフォーマンスの最大化に向けてより複雑な配信設定ができるシステムを、AIを駆使しながら開発するつもりです。