購買以外の効果「免疫効果」「ガーディアン効果」「支援」とは?
ブランド・リレーションシップは、購買以外の行動にも影響を及ぼします。こうした購買以外の効果としてまずあげられるのが、肯定的なクチコミの発信(あるいはその一種である推奨行動)です。
肯定的なクチコミの発信
これまでの調査から、ブランドへの愛着が強まると、他の人にそのブランドを積極的に推奨するようになることがわかっています(e.g.,Park et al., 2010; Batra et al., 2012)。
そのほかにも数多くの研究により、肯定的なクチコミ発信やブランドの推奨に対して、ブランド・リレーションシップがプラスの影響を及ぼすとわかっています。
否定的な情報に対する抵抗
購買以外の効果には、否定的な情報に対する抵抗もあります。これは否定的なクチコミを無視したり、あるいはそれらに反論したりする行動です。それぞれについて説明します。
まずブランド・リレーションシップが形成されると、そのブランドに対する否定的なクチコミを無視する傾向が強まります(e.g.,Donavan et al., 2012.; Wilson et al., 2017)。
さらにブランド愛着が強まると、否定的な情報に対して不信感を抱くことが指摘されています(e.g.,Batra et al., 2012)。
否定的な情報に対する抵抗は、否定的な情報を無視するに留まりません。ブランド・リレーションシップが形成されている消費者は、ブランドの失敗や悪評に直面すると(肯定的な評価を保ち続けるだけでなく)より積極的にそれらに立ち向かおうとします。たとえば、ブランドに対する悪意ある書き込みを見つけると、自発的に反論してくれたり、ブランドが炎上したときに、進んで火消し役を演じてくれたりします。
私はこれら2つの効果を「免疫効果」と「ガーディアン効果」と呼んでいます。否定的なクチコミを無視するのは、そうした情報から悪影響を受けなくなることですから「免疫効果」といえます。否定的な情報に立ち向かうのは、そうした情報に積極的に対抗措置をとり、自らブランドを守ろうとするものですから「ガーディアン効果(自警団効果)」といえます。
ブランドに対する支援
購買以外の効果で忘れてはならないのが、ブランドに対する支援(サポート)です。ここでいう支援とは、消費者自身にとって直接利益にならないものの、そのブランドにとっては有益となる行動のことです。典型的なのは、既存製品を改良したり、新製品を開発したりするためのアイデアの提供です。
ブランド・リレーションシップが形成されると、そのブランドを「助けてあげたい」とか、ブランドの「役に立ちたい」という気持ちが生まれます。そしてこれがブランドに対する支援的行動として表れます。また、自己とブランドの結びつきが強い消費者ほど、企業との価値共創活動(co-creation)に動機づけられます(e.g.,Dretsch et al., 2014)。
最近は、アイドルやアーティストのファンがお金を出し合い、駅などに広告を出す「応援広告」が注目を集めているそうです(読売新聞オンライン, 2024)。自分の大好きなアーティストをより多くの人に知ってもらうための、ファンによる行動ですが、これもブランド・リレーションシップが生み出す「支援」の一種として考えることができます。
ブランド・リレーションシップのマーケティング効果について、購買効果と購買以外の効果について整理しました。購買効果としては、頑健な継続購買傾向、価格許容性、アップグレードなどがありました。購買以外の効果には、肯定的なクチコミの発信、否定的な情報に対する抵抗(免疫効果とガーディアン効果)、そして支援がありました。