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グローバルの風向き、トレンドを知る。海外カンファレンスレポート

OMO実現の鍵は横断データの活用と企業間コラボ、NRF APAC2024で見たサービスから考える

 世界最大規模の小売の祭典「NRF Retail's Big Show APAC 2024」(以下、NRF APAC2024)レポート第3回のテーマは横断サービスによるOMOの実現。顧客体験を向上するために業種・業態を横断したデータ取得について紹介する。

横断サービスによるOMOの実現

 オンラインとオフラインの境界をなくし、顧客がチャネルの違いを意識せずにサービスを受けられるようにするOMO(Online Merges with Offline)の考え方は既に定着した。

 その実現のために各企業は自社の顧客を一意に捉えるためのデータ基盤の拡充や、データを自由に取り出すことのできる分析基盤やダッシュボードの開発に取り組んでいる。自社が提供している各タッチポイントで顧客の行動をつぶさに捉え、それらを基にパーソナライズされた顧客体験を提供する狙いだ。

 しかし、顧客の消費行動やその前後の文脈まで網羅的に捉えるには、ひとつの企業が持つデータだけでは不十分だ。たとえば、顧客は1つの商品購入を決断するために口コミサイトを閲覧したり、サイトAやサイトBを比較したりする。また、1日の買い物であっても商品によって購入場所を分け、ドラッグストアとコンビニエンスストアを跨いだ買い物を行うことも容易に想像できる。

 つまり、顧客へ最適なサービスを提供するためには、顧客が触れるすべてのメディア・すべての店舗での行動情報を、時系列をもって把握することが理想的なのだ。そんな理想形の一つが、NRF APAC2024で紹介されていた業種・業態を横断した会員制サービスだ。

Yuu:複数のブランドを横断したロイヤリティプログラム

 「Yuu(ワイユーユー)」とはYuuの加盟店での買い物に応じてポイントがたまり、ポイントに応じて現金化や商品交換ができるサービスだ。日本ではおなじみの共通ポイントに近い考え方だ。加盟店としてはセブン-イレブンやIKEA、ケンタッキーなど幅広いブランドが参加している。

 Yuu公式サイトhttps://www.yuurewards.com/en より
Yuu公式サイトより
写真左:冷蔵庫のステッカー、中央:サッカー台のカード、右:レジの画面(筆者撮影)
写真左:冷蔵庫のステッカー、中央:サッカー台のカード、右:レジの画面(筆者撮影)

 香港では成人人口の約70%が利用しており爆発的な支持を得ている。満を持してシンガポールに上陸したというわけだ。筆者が実際にシンガポールの店舗を視察したところ、至る所にYuuとの接点が設けられており、力の入れようも見て取れる。

 Yuuユーザーはサービスを通じて、ブランドに関係なく様々なリワードの恩恵を受けられる。一方で、企業はプラットフォーム(アプリ)内での店舗間送客による恩恵はもちろん、データ拡充という意味でのメリットも強く感じているのだという。なぜならば自社での買い物情報だけではなく、Yuuの加盟店である他店舗での買い物情報を加味した分析から、顧客の買い物文脈や思考を捉えられるからだ。

 これは、まさにOMOを提供するためのアプローチの1つであると言える。つまり、リテーラーは顧客行動を横断的に捉えられる、Yuuのようなプラットフォーマーとのコラボレーションも考慮しなければならないということである。

OnePass:買い物を便利でお得にするサブスクサービス

 「OnePass(ワンパス)」はWesfarmers One Pass Pty Ltd.が提供するサブスクリプションサービスである。契約した顧客に、獲得するポイント(Flybuys)の増量や送料無料、スピード配達、返品無料など様々なお得で便利な特典を提供している。なお、加盟店にはKmartやTarget、Catchなどが挙げられる。

公式サイト(https://onepass.com.au/)より
公式サイトより

 OnePassによるビジネス効果として、会員/非会員の比較で、利用頻度が約2.7倍、利用金額が約3倍、オムニチャネルショッパーの数が約3倍といった結果がセッション中に共有された。

セッション「Delivering Customer Value Through the Power of Customer Data」より(筆者撮影)
セッション「Delivering Customer Value Through the Power of Customer Data」より(筆者撮影)

 この事実はOnePassのプラットフォームとしてのパワーの証明であるとともに、企業間のシナジーによってさらなる買い物機会を創出しているとも解釈できる。

 Yuuのアプローチ同様に、自社のデータから視野を広げ、顧客行動を全体で捉えた上でパーソナライズやレコメンデーションを行うことによって、隠れたニーズの顕在化や行動の後押しにもつながるのであろう。

 顧客行動を全体で捉えるためのデータの取得元はこのような顧客プラットフォームだけではない。NRF APAC2024の展示会場ではOMO決済と称してサービスを展開する企業「Ayden(アディエン)」がひときわ存在感を出していた。

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この記事の著者

岡本 静華(オカモト シズカ)

電通デジタル トランスフォーメーション部門トランスフォーメーション事業部 マネージャーコマース会社の設立・経営後、2017年に電通デジタルに入社。顧客体験設計のプランニングを中心としたDXコンサルティング業務に従事。リアル店舗を保有する企業のDX戦略策定から、顧客視点・従業員視点に立脚した体験価値の...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2024/10/03 09:30 https://markezine.jp/article/detail/46954

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