従来のビジネスモデルでは立ち行かなくなる可能性も
──2025年は、プラットフォーマーにどのような動きや、どのような広告が出てくるとお考えですか?
次の3つの予想を立てました。
- CV計測の問題が浮き彫りになる年に
- リテールメディア/コマースメディアは増え続ける一方、ネットワーク化によるボリューム担保を模索する年に
- オープンインターネットは生き残りをかけた年に
それぞれを、3つの切り口から解説しましょう。
Cookie対策
私の予想では、Googleが2025年の早い段階に3rd Party Cookieの「新しいアプローチ」を実装することで、Chromeブラウザでトラッキングの許可を求めるウィンドウのようなものが表示されるようになると考えています。この変更により、広告のターゲティングと広告効果の測定が著しく困難になるでしょう。広告の実際の貢献度は変わらなくても、計測できない部分が増えることで、次年度の予算確保にも影響を与える可能性もあります。
対策としてConversion API(CAPI)などの導入が考えられますが、技術的なハードルが高く、現時点では広く普及していません。また、コンバージョンデータの減少はAI学習にも影響を与え、最適化の効率低下も予想されます。
業界として、この新しい環境下での効果測定や説明方法の確立が急務となっています。
リテールメディア
リテールメディアは今後も成長が続くと予想されますが、日本市場では単独企業での成長には限界があり、ネットワーク化によるボリューム確保が重要になってきています。特に注目すべき点は、リテールデータの外部活用の拡大です。流通予算からブランド予算領域へのシフトが進み、獲得だけでなくブランディングにも活用される傾向が強まっています。
また、ノンエンデミック広告(プラットフォーム内で商品を販売していない事業者の広告)の増加も予想されます。たとえばAmazonでは、自社プラットフォームで商品を販売していない企業の広告も掲載されるようになってきています。ただし、ユーザー体験を損なわないよう、広告の配置や手法には慎重な配慮が必要です。
リテールデータの強みは、個人情報とPOSデータの組み合わせにあります。顧客の属性情報に加え、購買履歴や購買サイクルなど、実際の消費行動データを保有していることが大きな優位性となっています。特に日用品などの購買頻度が高い商品カテゴリーでは、その傾向がより顕著です。
3rd Party Cookieの廃止によるシグナルロスが懸念される中、実際の購買データに基づくリテールメディアの価値は一層高まっています。複数のリテールメディアを統合管理するプラットフォームやリテールDSPなど、様々なソリューションが登場しています。これらのツールをいかに効果的に活用し、自社の体制を整えていくかが重要なポイントとなるでしょう
オープンインターネット
オープンインターネットのメディアは、3rd Party Cookieの廃止により、まさに生き残りをかけた重大な局面を迎えています。従来のビジネスモデルでは立ち行かなくなる可能性が高く、一部のメディアの淘汰も予想されます。
特に大きな影響を与えると予想 されるのが、Google検索のAI活用(Search Labs)、AI Overviewの本格展開です。情報検索系のクエリに対して、AIが複数のソースから情報を統合して回答を提示する仕組みにより、個別のメディアへのトラフィックがさらに減少する可能性が高まっています。
GoogleはAIの学習用に優良なコンテンツを提供するパブリッシャーとの契約を進めていますが、これは一部の限られたメディアのみが対象となります。契約したメディアは継続的なコンテンツ提供が求められ、Googleへの依存度がさらに高まることが予想されます。
