顧客が知覚している価値に沿った価格帯を分析する「PSM分析」とは何か
また、顧客の知覚価値に沿って価格を決める際に、手軽にできる方法として「PSM分析」がある。同分析手法は顧客に価格についての4つの質問を行うもので、10年以上前からグローバルで使われてきた。
3つ目の質問「これ以上高いと検討に乗らない金額」、4つ目の質問「これ以上安いと品質や効果に不安を感じる金額」が顧客に購入を検討してもらえる価格帯となる。
たとえば、100人に同じ質問をして、価格を1万円にしたときには100人中何人の購入検討可能な価格帯になっているのかをプロットしていくと、顧客数推計ができる。そこに単価をかければ、売上の推計も簡単にシミュレーションしていけるのだ。
ただ、顧客の属性ごとに購入検討範囲となる金額は違うため、それぞれの傾向差も調べていくことも忘れてはいけない。たとえば下図では、DとEは支払い意欲が低く、AとB、Gの支払い意欲が高いことがわかる。メインターゲットをA、B、Gとするならば、そこを対象に先ほどの顧客数推計のシミュレーションを行ってみるといい。こうして顧客属性別にシミュレーションしていくことで、いかほどの価格帯であれば受け入れられるのかがわかり、値上げの意思決定リスクを減らせるのだ。
「マクドナルドがPSM分析をやっているかはわかりませんが」と前置きした上で、高橋氏は独自にビックマックを対象に実施したところ、通常店では450円、都心店では500円を超えると顧客が購入を許容する価格帯を離れていくことがわかったという。「実際にマクドナルドではこの調査結果に適合した値付けがされていて、地域に合わせてギリギリの値上げを行っていることが伺えた」と高橋氏は続けた。
「顧客属性ごとに異なる支払い意欲を明確にし、価格や施策に活用するのが重要です。たとえばディズニーリゾートの例では、子どものいる家族は人数が多くチケット代がかさんで支払い意欲が低くなることに対しては、小学生以下は入場料を半額にするといった属性に沿ったプライシング戦略をつくっています。それにより、客数と売上の損失をなくすようにしているのでしょう」(高橋氏)
失敗しない価格決めをするために
PSM分析は4つの質問に答えてもらうだけではあるが、自社で属性の分析も行い、それを元に適正な値上げ価格を導き出すのは難しいこともあるだろう。そこをコンサルティング会社や調査会社に依頼をすると、かなりの予算が必要になる。
そこでプライシングスタジオとノウンズは協業し、PSM分析を30万円から依頼でき、10営業日という速さで納品するサービス「価格クイックリサーチ」を提供している。
「PMS分析を自社で実施するので、ノウンズで調査だけ依頼をしたいという相談をいただくことがあります。しかし見ていると、そこから実際の価格を決めるためには様々な要素も考慮しなければならず、プロのノウハウがないと難しそうだという印象でした。当社では価格クイックリサーチにアンケートのサプライを提供しますが、これだけ価格を抑えて迅速に分析できるのは、すごく良いサービスではないかと思っています」(田中氏)
今は値上げをせざるを得ない時代になっているが、「しっかりデータを活用・分析することで、失敗しない価格決めをしていくことが大事だと思います」と田中氏は語り、同セッションを締めくくった。