知っておくべきサードパーティCookieに訪れる未来
続いて、7月のGoogleの発表を踏まえ、Cookieレスに対しどのような対応が必要か、アタラの杉原氏が解説した。
まず杉原氏は今回のGoogle発表内容を踏まえ、「今後Google ChromeにもAppleのATT(App Tracking Transparency)と同じような仕組みが導入されるのではないか」と予測した。
ATTはAppleのプライバシーフレームワークで、ユーザーから許可がないと企業がユーザーのデータをトラッキングできないようにするものだ。許諾率は20~30%と言われており、ATTに近い仕組みが導入されると、Google Chromeでもこれまでよりデータのトラッキングが難しくなる。
そして、杉原氏は既に「ブラウザ/OSシェアのデータを見ると、Cookieレスは相当進んでいる」と下の図を使い解説。
デスクトップで見ると全シェアの10%くらいしか影響がないが、今後ChromeとマイクロソフトのEdgeでも影響が出てきて、9割近いブラウザでCookieレスになる可能性がある。
またモバイルの場合、日本ではiOSのシェアが7割近いことから、既にモバイルでは多くのユーザーのトラッキングが難しくなっており、広告効果や計測に大きな影響が及んでいるのである。
「サードパーティCookieがほとんど使えなくなるという未来は、今年の年末に来るかもしれないし、来年初頭かもしれませんが、意外と近くに来ているんです」(杉原氏)
Cookieレス対応に必要な3ステップ
ここまでの話で、Cookieレスへの対応が急務であることはおわかりいただけただろう。しかし、疑問となるのが「どのように対応を進めていくべきか?」という点である。
この疑問に答えるため、登壇者の4名は事前に話し合い、Cookieレス対策に向けた3ステップを策定。把握する、整理する、実行するの3つに分け、各ステップでどのような対応が必要か紹介した。
1.把握する
最初のステップでは、「Cookieレスの自社への影響範囲」「代替施策」の2つを把握、理解することが求められる。
杉原氏はこの把握を「マーケティング部門だけで行うのではなく、経営陣とともに経営戦略として考えるべき」と語った。
またベネッセでは、Cookieレスの影響がどの程度あるのか試算を進めたところ、年々リターゲティング配信のCPA悪化が加速していること、同施策の2019年度実績と同程度のコンバージョン数を現在の環境下で獲得するには、コスト効率悪化に伴い10億円以上の追加投資が必要だということがわかったという。
2.整理する
2つ目のステップでは自社データの整理とプライバシー調整が必要になる。
自社データの整理はどのようなデータを保持しているのか、どう活用できるかを整理することを指す。一方、プライバシー調整は、データ活用を適切に行うため、顧客に対してはプライバシーポリシーの改定を行い、社内では法務や情報システムと連携・調整していくことが求められる。
Hakuhodo DY ONEの鈴木氏は、特にプライバシー調整が難しいと事例を交えて紹介した。
「最初はマーケティング部門に提案しますが、データの活用がどこまでOKか判断できず、法務部に判断を仰ぎます。多くの企業はここで提案がとん挫します。また、法務部からOKが出ても、今度は情報システム部からセキュリティの観点から改善点が出てくるなど、非常に時間のかかるプロジェクトになることが多いです」(鈴木氏)
3.実行する
3つ目のステップでは、まず「ファーストパーティデータを収集しているか、使える状態か」で行える施策が変わってくるという。セッションの中では、ファーストパーティデータが使える前提の対策がいくつか紹介された。
まず、ターゲティングと効果測定ともに共通ID(確定ID/推定ID)とデータクリーンルームの活用が可能になる。そして、The Trade Deskではパブリッシャーや広告主が利用できるオープンソースのIDフレームワークである「Unified ID 2.0」を提供している。
これにより、クロスデバイスであっても顧客を捉えた効率の良い広告配信を実現できる。また、よりリーチを広げたい場合は、確定IDに類似度の高いオーディエンスに対し拡張配信することもできる。
もちろん、コンテキストターゲティングなどファーストパーティデータを持たずともCookieレス対応はできるが、確定IDであるUID2のほうが正確性も高く拡張配信などの応用もできるので、ここまで3ステップで自社データを活用できる環境を整えることが求められる。