「送客」のしかけを作れているか。オウンドメディアの「質」を見る
この四象限を考えると、たとえばBtoB事業やその商材は左下の(3)「コーポレートコミュニケーション戦略」に位置することが多いでしょう。つまり、口コミが少なく、慎重に検討されてから購入に至る特徴があります。
しかし多くの場合、「コーポレートコミュニケーション戦略」の指標で測るべきところを、短期的な指標で評価しようとする傾向があり、期待する結果が得られないと、オウンドメディア施策の中止を判断するケースが多いように見られます。
重要なのは、企業SNSやオウンドメディアの効果が表れるまでに時間がかかるという認識です。実際に1年単位では十分な成果は期待できません。中長期的な投資が必要であることを理解した上で、将来のビジョンを描きつつ、まずはフォロワー数やPV数といった指標に注目することが大切だと思います。
ただし、それだけでは営業部門の理解を得られない可能性がありますよね。そこで、ビジネスにも直結させるために、左上(2)の象限「コンテンツマーケティングの活用」に取り組む方法があります。Webサイトへの流入からリード獲得につなげたり、アプリのダウンロードを促進したりするなど、具体的な成果に結びつける施策も並行して行うのが望ましいでしょう。このように、複数の要素を組み合わせながら、総合的に効果測定をして、成果を出していくことが重要だと考えています。
━━効果測定に正解があるわけではないですよね。まさにこのフレームワークが、自社のマーケティング、そして効果測定が本当に意味があるのかを問いかけてくれますね。
実際に現場で「今はこの指標を大切にできるといいな」と思っているものはありますか?
私たちも模索中でありますが、メディアの「基礎体力」、つまりメディアパワーをトラフィック数(※4)でチェックしています。年単位でどれほどの成長率があったか、その伸び率を「量」としてみている一方で、「質」としてはエンゲージメントレートを見ています。数値の出し方としては「100-離脱率」で、要は訪問者があるページを見た後に別のページに遷移してくれているかを確認する指標です。
※4:Webマーケティングにおける重要指標の一つで、サイトへの総訪問回数やセッション数など、Webサイト全体のアクセス量を表す数値。
記事に投資をしている以上、サイトを回遊していただいたり、別のページを見ていただいたりと、いわゆる「送客」のしかけをきちんと作り、それを「質」として見ていきたいなと思っていますね。
将来的には、営業にも自信を持って伝えられる成果が必要だと思っています。ビジネスインパクト、つまり顧客や潜在顧客へどれほど価値を届けられたかを実証していきたいです。
パーパス実現とビジネスインパクトの可視化がテーマ
━━「gemba」の今後の課題やテーマについて教えてください。
私たちの課題であり大きなテーマなのは、コーポレートコミュニケーションという観点で考えた際に、オウンドメディアを通じて、私たちのパーパスである「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」を体現し、社会課題解決に向けたソーシャルインパクトを生み出していくことです。そのためにも欠かせないのが、オウンドメディアがビジネスにもたらすインパクトの可視化だと考えています。
オウンドメディアが、CV(コンバージョン)を含む顧客体験の全体像でどのような役割を果たしているのか。たとえばオウンドメディアを通ったお客様と通らなかったお客様の行動の違いを見るなど、どれほどダイナミックにビジネスへのインパクトにつなげられているのか。それを可視化する方法論を確立し、事業部門を巻き込みながら、会社全体でオウンドメディアを活用する基盤を作ることが求められていると感じています。
━━では最後に、本日ご参加いただいた皆さんに向けて、一言お願いします。
私はオウンドメディアの運営において、生成AIをかなり頻繁に使用しています。気がつけば、AIとの対話が日常的になっているくらいです。
何か悩みがあったら、まずAIに相談してみるんです。たとえば、先程のようにブランドパーソナリティといった難しいテーマを考えるときは、頭が混乱してしまうので、パーパスなどをAIに読み込ませて、どんなアイデアが出てくるかを試しています。
皆さんもうまくAIと壁打ちしながら進めてみると、思わぬ答えに辿り着くこともできるのではないでしょうか。
━━本日はありがとうございました。